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風立ちぬ

日々の想いを風に乗せて…

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クラムボンはわらったよ。 

あと一週間、岩手のプチ旅行が近づきました。
もうじき、賢治の愛したイーハトーブに行けます。
とても、とても、楽しみです。
もう、行く事はないと思っていた憧れの地に行けるなんて夢のようです。

一人旅は大好きです。行こうと思えば行けない距離ではありません。
まだ、自分が働いているうちは、何とかやりくりすれば行ける場所です。
でも…いろんなしがらみがあって、行きたいからといって行ける環境ではないです。
娘が一緒に行こうと言ってくれなければ、行けませんでした。

こんな風に、わたしを連れ出してくれる娘に感謝しています。
ありがとう、アイリス。





賢治に逢いに行く、今、思えば、その伏線は今年の5月から始っていたのだった。
今年の5月のこどもの日に、マーガレットがスーパーに買い物に行ったら、おまけで、サワガニを二匹もらった。

『いりませんって言ったんだけれど、無理やり渡されちゃったのよ、どうしようか?』
そう言ってマーガレットは、ビニール袋に入れられた小さなサワガニをわたしに託した。
「え~?まだ、てっちゃんは喜ぶ年齢じゃないしね…飼い方もわからないし…」
わたしは、どうしたものかと思いながら、かわいい二匹のサワガニを見つめた。
そして、すぐに、宮沢賢治の"やまなし"の中に出てくるカニの兄弟を思い出していた。
大きいのと少し小さめの二匹のカニは、まるで兄弟のように見えたのだった。

とりあえずお菓子の入っていたブリキの缶に入れてみた。
サワガニは、かさこそ、かさこそと小さな音を立てながらブリキの缶の底をぐるぐる回っていた。
『ご飯粒なら食べるかも。』とマーガレットが言うので入れてみたが食べない。
「しらす干しなら食べるかな?」と、入れてみたがやっぱり食べない。
このままじゃ、死んでしまうだろう。かわいそうだから川に放してあげたいと思った。
「自転車で行ってきてもいい?」と聞くと、主人は『何を馬鹿なことを言ってるんだ。
そんなことより、さっさと夕飯の支度をしろ』と、怖い顔をした。

あきらめて夕飯の支度をしている傍らで、絶えずかさこそと音がしていた。
クラムボンはかぷかぷわらつたよ。…宮沢賢治の童話の一説が浮かんだ。
川底でカニの兄弟が、泡をはきながら、光に揺れる水面を見上げて話をしている場面を思い浮かべていた。

しばらくして、アイリスが仕事から帰ってきた。
そして、サワガニを見ると、『かわいい、これ、どうしたの?』と聞いた。
わたしが、ワケを話すと、サワガニの背中を指でつつきながら、
『クラムボンはかぷかぷわらつたよ。』と言った。

しばらくして『おかあさん、このままじゃかわいそうだから川に逃がしてあげようよ。』と言うのだった。
「そう、おかあさんもそう思っていたの。ご飯を食べたら行こうか?」
と言うことで、アイリスの運転でサワガニを川に放しに行くことのなった。

やっぱり、出来れば水が綺麗な川がいいよね。と言うことで、車で20分ほどの成木川まで行くことにした。
この辺りなら、水も綺麗だし、大丈夫でしょうと、橋の上からカニを放してやった。
家に帰ると『いったい何処までいったんだ?馬鹿じゃないのか。』と主人に呆れられたけれど、わたしもアイリスも満足だった。

『おかあさん、あのカニ、大丈夫だよね?』「うん、きっと、大丈夫だよ!」
わたしたちは、月の光の差し込む川床を、2匹のカニがトコトコと歩いていく場面を想像していたのだった。


sawaganiss.jpg


宮沢賢治  / やまなし

小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です。

 一、五月

 二匹の蟹の子供らが青じろい水の底で話ていました。
『クラムボンはわらつたよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらつたよ。』
『クラムボンは跳てわらつたよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらつたよ。』
 上の方や横の方は、青くくらく鋼のように見えます。
 そのなめらかな天井を、つぶつぶ暗い泡が流れて行きます。
『クラムボンはわらつていたよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらつたよ。』
『それならなぜクラムボンはわらつたの。』
『知らない。』
 つぶつぶ泡が流れて行きます。蟹の子供らもぽつぽつぽつとつゞけて五六粒泡を吐きました。
 それはゆれながら水銀のように光つて斜めに上の方へのぼつて行きました。
 つうと銀のいろの腹をひるがえして、一匹の魚が頭の上を過ぎて行きました。
『クラムボンは死んだよ。』
『クラムボンは殺されたよ。』
『クラムボンは死んでしまつたよ………。』
『殺されたよ。』
『それならなぜ殺された。』
 兄さんの蟹は、その右側の四本の脚の中の二本を、弟の平べつたい頭にのせながら言いました。
『わからない。』
 魚がまたツウと戻つて下流の方へ行きました。
『クラムボンはわらつたよ。』
『わらつた。』
 にわかにパツと明るくなり、日光の黄金(きん)は夢のように水の中に降つて来ました。
 波から来る光の網が、底の白い磐(いわ)の上で美しくゆらゆらのびたりちゞんだりしました。
 泡や小さなごみからは、まっすぐな影の棒が、斜めに水の中に並んで立ちました。
 魚がこんどはそこら中の黄金(きん)の光をまるつきり、くちゃくちゃにして、おまけに自分は鉄いろに変に底びかりして、又上流(かみ)の方へのぼりました。
『お魚はなぜあゝ行つたり来たりするの。』
 弟の蟹(かに)がまぶしそうに眼を動かしながらたづねました。
『何か悪いことをしてるんだよ、とってるんだよ。』
『とってるの。』
『うん。』
 そのお魚がまた上流(かみ)から戻つて来ました。今度はゆっくり落ちついて、ひれも尾も動かさず
 たゞ水にだけ流されながら、お口を環(わ)のように円くしてやって来ました。
 その影は黒くしづかに底の光の網の上をすべりました。
『お魚は……。』
 その時です。にわかに天井に白い泡がたつて、青びかりのまるでぎらぎらする鉄砲弾のようなものが、
 いきなり飛込んで来ました。
 兄さんの蟹は、はつきりと、その青いもののさきがコンパスのように黒く尖っているのも見ました。
 と思ううちに、魚の白い腹がぎらっと光って、一ぺんひるがえり、上の方へのぼつたようでしたが、
 それつきりもう青いものも魚のかたちも見えず光の黄金(きん)の網はゆらゆらゆれ、泡はつぶつぶ流れました。
 二匹はまるで声も出ず居すくまつてしまいました。
 お父さんの蟹(かに)が出て来ました。
『どうしたい。ぶるぶるふるえているじやないか。』
『お父さん、いま、おかしなものが来たよ。』
『どんなもんだ。』
『青くてね、光るんだよ。はじがこんなに黒く尖つてるの。それが来たらお魚が上へのぼつて行つたよ。』
『そいつの眼が赤かつたかい。』
『わからない。』
『ふうん。しかし、そいつは鳥だよ。かわせみと言うんだ。大丈夫だ、安心しろ。おれたちはかまはないんだから。』
『お父さん、お魚はどこへ行つたの。』
『魚かい。魚はこわい所へ行つた』
『こわいよ、お父さん。』
『いゝいゝ、大丈夫だ。心配するな。そら、樺(かば)の花が流れて来た。ごらん、きれいだろう。』
 泡と一緒に、白い樺の花びらが天井をたくさんすべつて来ました。
『こわいよ、お父さん。』弟の蟹も言いました。
 光の網はゆらゆら、のびたりちゞんだり、花びらの影はしづかに砂をすべりました。

二、十二月

 蟹の子供らは、もうよほど大きくなり、底の景色も夏から秋の間にすつかり変りました。
 白い柔かな円石もころがつて来て、小さな錐(きり)の形の水晶の粒や、
 金雲母(きんうんも)のかけらもながれて来てとまりました。
 そのつめたい水の底まで、ラムネの瓶(びん)の月光がいつぱいに透とおり、
 天井では波が青じろい火を、燃したり消したりしているよう、あたりはしんとして、
 たゞいかにも遠くからと言うように、その波の音がひゞいて来るだけです。

 蟹の子供らは、あんまり月が明るく水がきれいなので睡(ねむ)らないで外に出て、
 しばらくだまつて泡をはいて天井の方を見ていました。
『やつぱり僕の泡は大きいね。』
『兄さん、わざと大きく吐いてるんだい。僕だつて、わざとならもつと大きく吐けるよ。』
『吐いてごらん。おや、たつたそれきりだろう。いゝかい、兄さんが吐くから見ておいで。
 そら、ね、大きいだろう。』
『大きかないや、おんなじだい。』
『近くだから自分のが大きく見えるんだよ。そんなら一緒に吐いてみよう。いゝかい、そら。』
『やつぱり僕の方が大きいよ。』
『本当かい。じゃ、も一つはくよ。』
『だめだい、そんなにのびあがつては。』
 またお父さんの蟹が出て来ました。
『もうねろねろ。遅いぞ、あしたイサドへ連れて行かんぞ。』
『お父さん、僕たちの泡どっちが大きいの』
『それは兄さんの方だろう』
『そうじやないよ、僕の方大きいんだよ』弟の蟹は泣きそうになりました。
 そのとき、トブン。
 黒い円い大きなものが、天井から落ちてずうっと沈んで又上へのぼつて行きました。
 キラキラツと黄金(きん)のぶちがひかりました。
『かわせみだ』子供らの蟹は頸(くび)をすくめて言いました。
 お父さん蟹は、遠めがねのような両方の眼をあらん限り延ばして、よくよく見てから言いました。
『そうじゃない、あれはやまなしだ、流れて行くぞ、ついて行つて見よう、あゝいゝ匂(にほ)いだな』
 なるほど、そこらの月あかりの水の中は、やまなしのいい匂いでいつぱいでした。

 三匹は、ぽかぽか流れて行くやまなしのあとを追いました。
 その横あるきと、底の黒い三つの影法師が、合せて六つ踊るようにして、山なしの円い影を追いました。
 間もなく水はサラサラ鳴り、天井の波はいよいよ青い焔(ほのほ)をあげ、やまなしは横になつて木の枝にひつかかつてとまり、その上には月光の虹が、もかもか集まりました。
『どうだ、やつぱりやまなしだよ、よく熟している、いい匂いだらう。』
『おいしそうだね、お父さん』
『待て待て、もう二日ばかり待つとね、こいつは下へ沈んで来る、それからひとりでにおいしいお酒ができるから、さあ、もう帰つて寝よう、おいで』
 親子の蟹は三匹で自分等の穴に帰つて行きます。
 波はいよいよ青じろい焔をゆらゆらとあげました、それは又金剛石の粉をはいているようでした。

 私の幻燈はこれでおしまいであります。


 ★ 宮沢賢治の童話/やまなし から引用



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コメント

「クラムボンは笑ったよ」・・・この言葉の響きがやさしくて、賢治のなかでも好きな童話の一つです。
岩手は来週、楽しい旅になりそうですね。

サワガニのことでご主人がおっしゃる言葉が、もううちの主人とそっくりですよ。

前にスズメのヒナを拾ったことをお話したことがありましたね。私も心配していると、同じように言われました。私の場合はムッとして、まないたとかとんとん叩いちゃったり、しますよ。(笑)

結局あのヒナは巣立ちまで育ててあげられませんでした。

はるか #mauyLjdI | URL | 2010/09/12 19:45 - edit

はるかちゃん、こんばんは(*^_^*)
いつもコメントありがとう♪
「クラムボンは笑ったよ」
「クラムボンはかぷかぷ笑ったよ」
本当に、この言葉は空想力をかき立てますね。そして、はるかちゃんの言うように響きが優しいです。
クラムボンは、何を指しているのか?
アメンボだとか、カワエビだとか、カニのお母さんではないかとか、諸説があるのだそうです。
でも、わたしは、これだと決めつける必要は無いと思うのです。
賢治は、その響きを大切にしたんだと思います。そして、空想の世界の生き物として、読み手が情景を思い浮かべたらそれでいいのじゃないかと思います。
賢治って造語の天才ですね。

主人の言葉、はるかちゃんのご主人と同じですか?世の男性は、ほとんどみんなそうなのかもね(^_^;)
でも、中には、「そう、いいことをしたね。でも、一番の功労者は、マーガレットさんかもしれないね。スーパーからサワガニを助け出してきたんだから!」なんて、言ってくれるお友達もいました。

そうですか、スズメのヒナを育てるのは難しいですからね。でも、お子さんたちと命を守ろうと一生懸命頑張った日々は、きっと、お子さんたちの記憶に残るのではないかと思います。

sizuku #a8vfL3MM | URL | 2010/09/14 00:12 - edit

楽しみですね

いよいよですね。
旅の報告楽しみにしています。

kan #5wY3J9rw | URL | 2010/09/17 02:08 - edit

kanさん、ありがとうございます(^^)
19日はレンタカーを借りて移動する事になりました。
道路が混んでなければ、遠野まで行けそうな気がします。
ただ、娘が頼りで申し訳ないんですけれど…(^_^;)
kanさんお勧めのふるさと村まで足を伸ばしてみます(*^_^*)
報告、楽しみにしていてください。多分珍道中のはずです!

sizuku #a8vfL3MM | URL | 2010/09/17 23:21 - edit

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