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風立ちぬ

日々の想いを風に乗せて…

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桐の花に思う 

kurasawa_019.jpg

わたしが、桐の花を知ったのは、まだ日が浅い
山を歩いても、あまり樹に咲く花には興味が湧かなかった。
いつも足元に咲く小さくて可憐な野の花にばかり目が行っていたから樹を見上げるこ
とが無かったのかも知れない。

それでも、梅や桜やズミ、アカヤシオ、ムラサキヤシオ、オオカメノキぐらいは知っ
ていたけれど。
そんなわたしが、奥多摩を歩き始め、春夏秋冬、森を歩くようになると、木々に目が
行くようになった。
必然として、樹に咲く花にも気付き始めることになる。

早春の芽吹きと共に、マンサクやアブラチャン、ダンコウバイ、
カツラやフサザクラや楓たちの花、山桜が終わると、地味だけれど、
ブナやチドリノキたちの花、そして、新緑の中に薄紫の山フジの花が咲き、
白いニセアカシアの花が谷筋を埋め、甘い香を漂わす。

ウスバシロチョウやミヤマカラスアゲハがふわりと吸蜜に訪れ、熊蜂がせわしなく飛び回る。
大きなホオノキの花もよい香、トチノキの白い花が天に向かい、ナナカマドの小さな花は
雪のように花びらを散らし始める。
森影でヤマボウシの白い花が、枝先に揺れていたりする。

kurasawa_033.jpg


その頃、緑溢れる川岸に咲いた桐の花を見た。
奥多摩湖半でも、青い水面に映えるようにいくつもの桐の花を見たとき、
その凛とした美しさに心が洗われた。
それまで、桐の花を知らなかったのに、一目で桐の花だと分かったのが不思議だった。

それ以来、わたしは桐の花が好きになった。毎年、桐の花に出逢えると嬉しくなる・
たくさんの花の中で、なんでこんなにこの花に心を惹かれるのだろうか。

そんな時、この随筆を読んだ。

    群っていても実は孤独で、おっとりしていてもなかなか怜悧で。
    しのびやかにしかもはればれと桐の花。

この一文で、わたしが桐の花に惹かれた訳が分かった気がした。
五月の朝の中空に、偲びやかに、だけど晴れ晴れと咲く、孤高な桐の花…とても好きです。


kurasawa_022.jpg



五月の朝の花        岡本かの子

ものものしい桜が散った。
 だだっぴろく……うんと手足を空に延ばした春の桜が、しゃんら、しゃらしゃらと
どこかへ飛んで行ってしまった。
 空がからっと一たん明るくなった。
 しんとした淋しさだ。
 だが、すこし我慢してじっと、その空を仰いでいた。
 じわじわと、どこの端からかその空がうるみ始めましたよ、その空が、そして、空
じゅうそのうるみが拡がって。
 その時、日本の五月の朝の中空には点々、点々、点々、点々。細長いかっちりした
薄紫の鈴――桐の花です。お洒落でつつましやかで、おとなしくてお済しで、群って
いても実は孤独で、おっとりしていてもなかなか怜悧で。しのびやかにしかもはれば
れと桐の花。
 桐よりも、ずっと背が高いのにせんだんの気の小さいポチポチ花。
 だが咲くだけ咲いてしまえば実に思い切りよく大ふうにさらさらと風にまかせて銀
砂の様に私達の歩道に、その純白の粉花を一ぱいに敷きつめてくれる。
 もう少し行って御らんなさい。
 そら、大粒の赤玉、白玉のメノーを七宝の青い葉茎がくっきりうけとめている、
チューリップ!
 ルビーと紫水晶のかけらのスイートピー。
 くじゃくの彩羽の紋所ばかり抜いて並べたパンジー。
 毛唐国の花だとさげすみながら、人は何と争って五月の花壇の真中に何よりも大切
にこの宝石の様な花たちを、栽培するようになった事よ。さて、その花達に夜の間
宿った露、朝日が射せば香わしいほのかな靄となって私達のもすそをしめらす。
 目をとめてよく見ると、半開きの白ばらの花のかげ――肥料をやりたての根本の赤
土の上に生れたばかりの小さいひきがえるがよちよちしている。
 お! 八百屋が、大きな玉菜とオレンジを運んで来た。勝手元の方へ知らせてやろ
う。

岡本かの子:明治時代の豪商の生まれで、あの岡本太郎の母だそうだ。
同じ芸術家どうしの結婚生活に常に葛藤していた。小説家でもあるという。
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category: 日々の思い

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コメント

桐の花、初めて見ました
高校生の頃に読んだ源氏物語の中で、私の抱く桐壺の女御は灰色がかった薄紫のイメージでした
源氏物語の桐壺は光源氏恋しさに生き霊になってしまうけど
桐の木は何事にも動じず、シャンと立ってる木
なんで生き霊の名前が桐壺なのか、ずっと心に引っかかってました
でも、sizukuさんの画像見てドキッ!
この花色が桐壺の色だったんですね~
こんなに明るいところではなく、今にも雨の降りそうな
どんよりした梅雨空の下で見たら、
恋心を押し殺して生き霊になってしまう桐壺のイメージに重なるかもしれません
紫式部もそう思ったのかしら~ なんて考えたら、何十年かぶりに源氏物語読みたくなりました

なみちゃん #- | URL | 2012/06/08 01:48 - edit

なみちゃん、コメントありがとう(*^_^*)
源氏物語ですか~♪わたし、全部、ちゃんと読んだことないんです。
う~ん、今さらだけど、読んでみようかなって気持ちになりました。ありがとうです(*^_^*)

恋心を押し殺して生霊に…なんて可哀そうなの(/_;)

わたしのなかの桐の花は、清々しい凛々しいイメージです。
いろいろな人のお話って、感受性が違って、とっても世界が広がって嬉しいです。
目からうろこ!なみちゃんのお庭に出逢った時の衝撃と似てます~(^O^)
なみちゃん、いつもありがとうヽ(^。^)ノ

sizuku #- | URL | 2012/06/08 21:22 - edit

桐の木はまっすぐに上に向かっている木ですね。
花を見たのは義父の病室の窓越しでした。

治る見込みのない義父に、嘘の言葉を並べる夫を見やりながら、自分はどうしてよいのか戸惑いながら、桐の花をぼんやり眺めていました。

岡本かの子さんの言葉は力強くて美しいですね。
夫公認の愛人がいたそうです。豪快に生きた明治の女らしい
言葉ですね。

はるか #- | URL | 2012/06/08 21:34 - edit

はるかちゃん、こんばんは(*^_^*)
桐の花、あるかちゃんには、そんな思い出があったのね。
人それぞれの物語…一つの花にそっと込められているんですね。
うまく言えないけれど、その時の光景がハッとするくらいリアルに浮かびました。
はるかちゃん、いつも、コメントありがとう。

そうそう、三人婚って読んでびっくりでした。
この時代に、そんな奔放に生きられる女性って凄いですよね。
でも、そんな彼女も子供を相次いで亡くし、神経衰弱(ノイローゼ)
に陥って入院したりしたそうです。

そして、夫を愛せず苦しみながらも夫婦で宗教に救いを求めようとして、
仏教解説の第一人者にもなったそうです。
きっと自分に正直で、逃げることのない女性だったのでしょうね。

sizuku #- | URL | 2012/06/09 00:07 - edit

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