Admin New entry Up load All archives

風立ちぬ

日々の想いを風に乗せて…

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

category: スポンサー広告

CM: -- TB: --   

真冬の滝 

2月4日

毎日、毎日、氷点下の朝。それに、数日前には雪も降った。
きっと、今年こそは百尋の滝の完全凍結が見れるに違いない。
毎年、この時期に訪れているが、まだ、完全凍結に出逢ったことがないのだった。

わたしは、この滝が好きだった。もう一つのお気に入りはカロー大滝だが、
こちらの滝は、まだ厳冬期に訪れたことが無かった。
どちらにしようかと迷ったが、カロー大滝のある小川谷林道は依然として
通行止めのままだと聞き、やはり百尋の滝に決めたのだった。

hyakuhiro2_003.jpg

安曇野さんとお友達のshinさんを誘い、三人で行くことになった。
街中の雪は消えているが、日原街道に差し掛かるとたくさんの雪が残っていた。
そして、川苔谷に続く林道は、カチンコチンに凍りついた個所があった。
わたしは、油断していて滑って頭を強打してしまった。

あいにくザックを下ろしていたので、空身でもろに頭を打った。
目から火花とは良く言ったもの、頭の中がカキィーンという音がして、
目の前が真っ白になった。

しょっぱなからドジってしまって先が思いやられるとしょげたのだが、
頭も痛くなく大丈夫そうなので、山行は続けることにした。
考えてみたら、『この先の道は、もっと大変だから気を付けろよ』と、
山が教えてくれたのかも知れない。と、そう思ったら何だか気が楽になった。
どれだけポジティブな思考回路なのかと自分でも呆れながら雪道を登り始めた。

hyakuhiro2_027.jpg

雪はそう深くないものの、アイスバーンになった箇所が何か所もあり
わたしは、滑ってばかりなので早々にアイゼンを装着することにした。
この渓谷は、片側が切れ落ちた渓谷になっているので、足を滑らすと
大変な事になりそうな箇所がいくつかあったし、渓谷を渡る木橋も
高架な上に、氷でツルツル滑ってちょっと怖かった。

キーンと張りつめた朝の空気は清々しく、山肌が朝陽でオレンジ色に
染まり行く様は美しかった。
やがて、深い谷にも陽射しが届くと、インクをこぼしたように、
雪の谷間を流れていた深い藍色の川が、オレンジ色に輝いた。
その川面は波一つなく、まるで鏡面のように凪いでいた。

hyakuhiro2_079.jpg

川岸には、カツラの老樹が佇み、古りし幹は黒々と白い雪に映えていた。
なんて静寂な景色なのだろう。
時折り、枝先を渡りゆくエナガの群れの囀りと、絶え間ない川音だけが
流れてくる。あとは、わたしたちが踏みしめる足音だけだ。

流れの岸辺に発達した純白の飛沫氷や、岩肌を流れ落ちた湧水が
創り出した透明な氷柱たちが、美しい氷の世界を見せてくれた。
わたしは、この氷の世界を見れただけでも満足だった。
時々、立ち止まってはカメラを向けながら登り続けた。

hyakuhiro2_081.jpg

hyakuhiro2_035.jpg


いったん、川を離れ、杉林の山道を登りあげ、また川にでる。
この杉木立の中に、モミの巨木が立っている。
雪の小道とモミの樹皮に木漏れ日がまだらな光と影を作った。
大小様々な岩が累積している川を渡り、今度は岩の道を登りあげる。
その登り口にある湧水は、いつも枯れることなくこんこんと
湧きだしているのだが、凍っていなくて不思議だった。

大岩の角を曲がれば百尋の滝が視野に飛び込んでくる。
そして、この瞬間、いつもと違うと五感で感じた。
大岩が見え始めた頃から、いつもなら轟々とした滝音が聞こえて
くるのだが、今日は何も聞こえてこない。
岩角を回りこみ、氷りついた滝を目にした途端、わたしたちは
思わず声をあげた。

hyakuhiro2_144.jpg


青空に聳え立つような岩壁の中央に、青白い氷塊が圧倒的な
存在感で君臨していた。
いつものような轟音は、氷の中に閉じ込められたかのように
かき消され、不思議なほどの静寂の世界だった。
流れの一筋一筋が、そのまま凍りついたかのような巨大な
飛沫氷の造形は、氷の女王の宮殿のようだと思った。

hyakuhiro2_158.jpg


滝壺も、美しいブルーのしじまに氷りついていて、滝の真下まで
歩いていくことが出来た。
真下から氷漠を見上げると、その美しさに圧倒されて言葉も出ない。
わたしたちは、無言のまま写真を撮り続けたのだった。
良く見ると、小さな亀裂が滝の上部に生じていて、そこからは
細かな霧のようになって水煙が上がっているのだった。

hyakuhiro2_167.jpg

そして、よく耳を澄ましてみると、氷の中を流れ続ける滝の音が
ポコポコと微かな音で聞こえてきた。
「あ~!春の音だ!春の音が聞こえる。」わたしは、ずっと以前
残雪の尾瀬沼で聴いた音と同じだと思った。
こんなに完全に凍結した滝なのに、季節は巡ろうとしている。
そう感じた瞬間、「ああ、来て良かった…」と思えたのだった。

hyakuhiro2_197.jpg

きっと完全凍結が見られたのは今日が最後だろうと思った。
午後の陽ざしに、滝壺の氷の下を、黒い気泡のような水が絶え間なく
流れていたからだった。
わたしたちは、名残りを惜しみながら氷漠を後にした。

帰り路、長滝の反対側の山肌が、おびただしい氷柱に覆われていて
そこに日差しが当たり、まるで燃えているようだった。
いつもは降りられない斜面も、深い雪のお陰で降りられる。
わたしたちは膝まで雪に潜りながら斜面を下りていった。

hyakuhiro2_069.jpg

長滝の落ち口から滝壺を眺めることが出来た。
そして、いつも気になっていた、渓畔樹のサワグルミの根元に
立つことが出来た。わたしは、その巨木の幹に手を当てた。
思っていた以上の素晴らしい株立ちの巨木だった。
根元のすぐ下を流れる川と滝とのコラボも素晴らしかった。


hyakuhiro2_470.jpg

hyakuhiro2_284.jpg

帰りには、気温も少し上り、ところどころで氷柱の欠片を見つけた。
わたしは、その欠片を拾い上げた。
一点の曇りも、不純物もない透明に透き通った氷の欠片…
そっと太陽に透かせると、キラキラと輝きを放った。
綺麗!!と呟いた時、「どこかで、春が生まれてる…」
そう、感じたのだった。

hyakuhiro2_537.jpg

わずかな陽射しに温もりながら、カツラの老樹がせせらぎの音を聞いていた。
冬木立たちもまた、季節が移ろうことを知っているのだと思えた。
同行してくださったshinさん、安曇野さん、素敵な山旅をありがとう。

hyakuhiro2_514.jpg

この山旅をデジブックにまとめて見ました。
よろしければ、下のURLから、ご覧ください。


スポンサーサイト

category: 森・山

CM: 2 TB: 0   

コメント

氷の宮殿

「川苔山」・・・・・・高校時代、地理の先生から川で海苔が採れるからカワノリサンと呼ばれている、と教わった記憶があるけれど^^;)

デジブック、楽しませていただきました。

真冬の滝、その姿は神々しく「冬の神」が宿っているような崇高な近寄りがたさを感じました。

風と光と氷だけのクリスタルな世界。氷漠の前に立つと心までが透明になりそう。『耳をすませばかすかな流れの音が聞こえる』静寂そのものですね。

青空を映してではなく『空色を浮かべ』が良いなって思いました。

立春の日、完全凍結のリミットだったのですね。今頃は、春の足音が徐々に近づいているのでしょうね~~。
♪山の三月 東風吹いて・・・・・。

usagisan #- | URL | 2012/03/06 02:33 - edit

usaさん、いつもコメントありがとうございます。
真冬の滝、確かに神々しいのですが、わたしは、すぐそばに…
行きたい、手で触れたいと思いました。
不思議な事に、何故か温か味を感じましたよ。(*^_^*)

>風と光と氷だけのクリスタルな世界。
この表現、素敵ですね。

そうですね。今日辺りは暖かさに、♪どこかで春が生まれてる~♪
そうそう、スプリングエフェメラル…、ハナネコノメが数輪、咲きだしたとの事です。

sizuku #- | URL | 2012/03/06 21:17 - edit

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://sion920.blog74.fc2.com/tb.php/224-219e49be
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。