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風立ちぬ

日々の想いを風に乗せて…

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春愁の尾根 

2006年の冬から春にかけて、わたしは奥武蔵の山中にあるブナの巨木を探していた。
そのブナは山中のウノタワという窪地にあるという。
地図を広げてみても、ウノタワという地名はどこにもなかった。
どうやら、妻坂峠と鳥首峠へ抜ける稜線上にあるらしいという事は分かった。
でも、名郷の奥にある無名の沢から直登できそうだ。
わたしは、このマイナールートからアクセスしてみたくなったのだった。

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木々の葉が散り敷いた12月。林道を登り上げたところにある沢に辿り着いた。
わたしは早速、踏み後のような道を登り始めた。
静かな水音が響く小さな沢沿いに登って行くと、途中で沢が消え道が二股に
別れているところに辿りついた。

その場所に、大きなサワグルミが立っていて、その幹には、ウノタワと
書かれた木の札が取り付けられていた。その下には、ルートを示した
ブリキの看板があったが、古くて、赤いペンキが消えかけていた。

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わたしは、その看板をじっくり眺め、左の道を選んだ。
ところが、そこからの踏み後は、大量の落ち葉に埋もれ、途中で見失った。
でも、葉を落とした明るい森は良く見渡せるし、ピークは容易に判ると考えた。

わたしは、ひとつのピークを見定めて、急斜面を登り始めた。
途中、何度も振り返ったり、周りの大岩などの目印を頭に叩き込みながら登り
何とか尾根上のピークに辿り着いたが、あるはずの登山道が見当たらなかった。

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結局、ウノタワを見つけることが出来なかったが、美しい枯葉の森を彷徨った
記憶は鮮明に脳裏に残った。
後に判った事だが、この時は、実際よりも大分左よりへと登っていたようだ。

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年が明け、次に訪れたのは、木々の芽吹きが始まる前の早春の季節だった。
相変わらず静かな水音を聞きながら、沢を遡れば、早春の花たちが迎えてくれた。

点々と咲き続くニリンソウ、薄紫のヤマエンゴサクや、ハナネコノメなどに
心惹かれながら、サワグルミの木の下の案内板のところに辿り着いた。
前回、左の道を取ってダメだったので、今度は右の道を行ってみることにした。

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右の道にはガレた沢が続いていて、のっけから倒木などを乗り越えていくような
野趣溢れる道だった。
岩だらけの沢を詰めていくと、大きな岩戸のような巨岩に行く手を阻まれた。

巨岩の裂け目を水が流れ落ちていて、さながら小さな滝のようになっている。
光が当たって輝く滝を見ようと、岩に這い上がって、わたしは声をあげた。
その岩戸には、ハナネコノメの小さな花が群生を作って咲いていたのだ。

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チロチロと流れる水に、陽射しが差し込んで美しく輝きを放った。
何だか、巨人になって、小さな箱庭のような滝を眺めているようで、
「不思議の国のアリスになった気分…」だった。

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素晴らしい聖地に迷い込んだような気がした。
わたしは時を忘れてハナネコノメの撮影に没頭した。
やっと、我にかえり、どこかに道はないかと探したけれど、
どうやら、その先にも道は無いようだった。

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やはりこちらの道も違うようだけれど、このハナネコノメが咲く岩戸を
発見しただけで満足していた。ハナネコノメに、ちょっと後ろ髪を引かれ
ながらも、沢を離れ、枯葉の尾根をもう少し登りあげてみた。

ザクザクと足首まで枯葉に埋もれながら、緩やかな斜面を登り上げると、
一面に、バイケイソウの若葉が芽を出している場所に辿り着いた。
良く見るとそこら一面に、大好きなヒナスミレが咲いている。
バイケイソウの若い緑と、ヒナスミレの淡いピンク色
周りは枯れ色なのに、なんだか、その谷間だけ春が来ているようで、
とても不思議な光景だった。

ヒナスミレ
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バイケイソウ
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そして、翌年の春。ウノタワへの願望は諦めきれずに、もう一度
左の道に挑戦するために、再びこの場所に立った。
それは、前回よりも少し春が進んだ季節だった。

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木々は、芽吹いたばかりの透き通るような緑の葉を風に揺らしていた。
柔らかな若葉のそよぎに光までも緑に染まりそうだった。

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足元には、ニリンソウが群落を作り、水色やピンクのヤマエンゴサクが
小人の三角帽子のような花を風に揺らし、ハナネコノメの花に変わって、
愛らしいコガネネコノメソウや、シックな色合いのヨゴレネコノメソウや、
ツルネコノメソウが沢筋のいたるところで、群れていた。

コガネネコノメ
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ヤマエンゴサク
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ニリンソウ
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大好きなスミレたちも、ナガバノスミレサイシンや、エイザンスミレ、
ヒナスミレ、タチツボスミレ、と咲き誇り、シコクスミレの凛とした
純白の花にも逢えた。

タチツボスミレ
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マルバスミレ
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わたしは、そんな春の花たちに癒されながら登っていく。
前回、間違えた箇所が、今回はしっかりと道が見えていた。
こうして、尾根へと登り上げると今度はカタクリや小さなフモトスミレ
たちに迎えられた。まるで花の道だった。

トウゴクサバノオ
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ヤマエンゴサク
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ミツバコンロンソウ
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ヒトリシズカ
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カタクリ
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ナガバノスミレサイシン
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やがて、杉木立を抜けると、広々とした窪地に飛び出した。
杉苔に覆われたふかふかの湿地、まるでスポンジに乗っているような
心地良い感覚に、わたしは、靴を脱ぎ、裸足になって走り回った。
まるで、子どもになった気分、足裏がすごく気持ちいい…
ここが、ウノタワだった。

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そして、その窪地の先の緩やかに起伏する尾根の向こうに、探していた
ブナの巨木を見つけた。その時の感動は忘れられない。
尾根に続く道には、足の踏み場も無いほどの、フモトスミレの群落も
あったのだった。

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春愁の尾根…あの日の感動を求めて今年もこの季節に訪れた。
残念ながらシコクスミレは蕾のままで、あれほど地面を埋めていた
フモトスミレの姿は、どこにもなかった。
けれど、他の花たちがわたしの心を癒してくれてしあわせだった。

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シコクスミレの蕾
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category: 森・山

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コメント

久しぶりの抒情詩

sizukuさん おはようございます。
ひさしぶりの散文拝見しました。
情感のこもったsizukuさんの散文はやはり素敵です!

このウノタワは花の宝庫ですね。
ハナネコ、コガネネコノメ、ヒナ、フモト、エイザン・・・とあるのですか。
わたしもぜひ行ってみたいです。

こいちゃん #mVtElozE | URL | 2011/05/12 08:50 - edit

こいちゃんへ

こいちゃん、こんばんは(^^♪
この頃、何かと忙しくて、ブログの更新がさっぱりでした…
書きたい事は山ほどあるんですが、なかなか…^_^;
久しぶりの更新なのに、早速、見てくださってありがとうございました。

ウノタワの群落は、数は多くないのですが、点々と川沿いに広がっています。
花の種類は多いと思いますが、スミレは、間をおいて咲くので、全部一緒にとはいかないみたいです。
今の時期は、コガネネコノメがたくさんで、かわいすぎです(笑)
フモトスミレの群生も、今年は咲いてくれるのでしょうか?
ここのフモトは、それはそれは、小さくて、愛らしくて、背丈が3センチぐらいなんですよ。
ぜひ、見て欲しいです~♪

sizuku #a8vfL3MM | URL | 2011/05/12 21:22 - edit

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