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風立ちぬ

日々の想いを風に乗せて…

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秋雨の渓谷 

雨の週末、イチョウの木の黄葉が見たくて御岳渓谷へと向かった。
御嶽駅の駅舎の脇に立つ小さなイチョウの木もすっかりと色づいてたくさんの葉を落
として駅の階段を埋め尽くしていた。

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老舗の旅館の脇に続く石畳の道をしっとりと降りていくと多摩川の清流が白波を立て
る渓谷が現れる。
そして、雨に煙る対岸に目指す大銀杏がひと際美しく佇んでいた。

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川岸に架けられた御嶽小橋を渡って行く人たちの雨傘がふたつ、三つと寄り添って風
情がある。

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わたしも橋を渡りイチョウの木の下へと向かった。
小さな流れ込みを渡る苔むした欄干にもイチョウの葉やカエデの葉が散っていた。

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イチョウの木は思わずため息が漏れるほど、美しい姿だった。
空へと伸ばしたどの枝にもびっしりと葉を付け、どの葉も一点の混じりも無いほど澄
んだ黄色に染まっていた。今日が晴れていたのなら、陽射しを受けて、きっと金色に
輝いたことだろう。
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根元には一面にその葉が散り敷いて、石畳の道が、まるで黄色の絨毯を敷き詰めたよ
うにふんわりと柔らかく感じるのだった。
せせらぎを望むベンチにも、イチョウの葉がひっそりと舞い降りる。

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傘をたたく柔らかな雨音と、絶え間ない瀬音が優しく溶け合ってわたしを包んだ。
イチョウもまた、葉をたたく雨音と、滲むようなせせらぎの音を聞いているのだろう
か。

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玉堂美術館の石段にしだれかかるような楓の木が、オレンジと緑のほのかなグラデー
ションを見せている。

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雨に濡れたその姿はしっとりと美しく落ち着いた和の佇まいの美術館にとても良く似
合っていた。

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前回訪れたのは夏の初めだったろうか、水をテーマにした展示物だったが、今回は、
秋をテーマにした作品がゆったりとしたスペースに展示されていた。
入り口に飾られた大輪の菊の生け花も秋色の風情で、ほんのりと芳しい菊の香りが漂
い流れていた。

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玉堂の絵は繊細な日本画の世界。淡い墨の濃淡と石絵の具の控えめな色調が美しい。
わたしは、絵画には詳しくないが、何も描かれていない空白の部分にこそ、その絵の
奥ゆきとか情感とかが描き込まれているような気がしてならないのだった。

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時は、目に見えないけれど確かに存在しているように、玉堂の絵のなかの白い空白の
部分には、時空を越えた想いが在るような気がしている。

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玉堂が残した数々の繊細なスケッチの中で、わたしは、特にこの魚が好きだ。
この絵を見ていると、澄んだ水までも感じられるのだった。

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そして、このスケッチ画…
A4サイズほどの小さな画帳は、糸で閉じられ見開きになっている。
縁は、丸くめくれ、玉堂愛用の画帳だったことがうかがえる。
珍しく洋画タッチの水彩画に、とても惹かれた。

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また、自然のものを扱った精密画は、ほんとうに繊細で素晴らしく、写真のように忠実に描かれていて、その才能の非凡さを感じる。
特に、鳥の絵は素晴らしい…!!

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この鷹の絵は、掛け軸に描かれた大きなもので、迫力ある眼光が、生き生きと感じる。

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天井が高い美術館の内部は、窓が無くて外の景色は見えないし、音も遮断されてい
る。静かに音楽が流れて心地良い空間だ。
空調が効いていて一定の湿度が保たれている。それなのに、何となく、外を濡らす雨にしっぽりと包まれているような気がした。
ああ、美術館の中にも雨が降っている…わたしは見えない雨音を聴いていた。

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美術館の中庭は、石庭が作られている。白砂の中に、大小の石が配置され、まるで墨
絵のような風情だ。めぐらせた低い土塀の向こうには、大銀杏や周りの山々が借景と
して見渡せる。特に大銀杏が黄葉した秋には、その美しさが際立つのだった。

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軒を伝う雨が、絶え間なく落ちて、その先の大銀杏も雨に煙る。
玉堂がアトリエとしていた離れの側には、楓の木が寄り添うように佇み、雨に濡れて
控えめに燃えている。

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軒下に佇む人たちも、みな、言葉少なに雨音を聞いているようだ。
時折り、わたしが押す、シャッター音が妙に大きく聞こえたりする。
雨の庭園の白砂に零れた木の葉と雨粒を見つめながら、心行くまでイチョウの木と対
話した後、美術館を後にした。

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外に出ると、いくらか雨も小降りになってきた。
庭の山茶花の花が雫を溜めてひと際美しく艶やかな色彩を放っていた。

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雨に濡れた地面に、美しい紅いの花びらを惜しげもなく散らしていた。
ハート型の愛らしい花びらと、くるんとカールした蕊を拾い上げたら、少女のまつげ
のように思えて、歩道の上に並べてみた。

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ピンクの花びらの上に、イチョウの葉の髪飾りを乗せたら、ほら、
かわいい“さざんか姫”のできあがり。

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ケヤキの紅葉も、しっとりと、雨…

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イタヤカエデのシックな黄葉も、雨…

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寄り添うカエデも、しっぽりと雨…

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燃えるような銀杏の梢も、雨…

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幹に舞い降りた葉にも、雨の雫…

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根元に降り積もる落ち葉にも、雨…

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水溜りも、銀杏の黄色を映して、雨…

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落ち葉たちを写しているうちに、急速に雨が上がったので、杉木立ちの中の坂道を登りあげて御嶽大橋へと向かう。
楓の葉に輝く雨の雫…なんでもないけれど、こんな点景がとても好きだな…と思う。
雨の日に、歩かなければ出逢えない光景に、いま、こうして逢えたことに感謝した。

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御嶽大橋からの光景もまた素晴らしかった。遠くの山々から靄が立ち昇り、急速にお
天気が回復していくことを予感させた。

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橋の上から、下流の方向を望む。

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上流方向の紅葉は見事な彩りだ。

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派手さは無いけれど幾重にも重なる柔らかく、シックな色合いの渓谷の紅葉が、雨に
濡れて一段と落ち着いた趣があり、青く澄んだ流れにとても良く調和していた。

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雨にもめげず、錦秋の渓谷にカヌーを浮かべ、急流に挑む人たちがいた。
大型のボートに数人の人が乗り、オールを操る。遠くから一艇、下ってくる。
流れの上から渓谷を眺めたらどんな感じなのだろうかと想像しながらカメラで追って
みた。

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ちょうど、大銀杏の前の瀬を、一艇のカヌーが、流れを遡って行こうとしていた。
イチョウと同じ、鮮やかな黄色いカヌーだった。
逆巻く白波に、一片の葉のように揉まれながら、オールを漕ぎながら挑む。
いろいろな楽しみ方があるのだなと思った。

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すっかりお天気も回復したのでそのまま、遊歩道を歩き、川井へと向かい、もう一つ
の美術館を訪ねることにした。(続きはまた明日、よろしかったらご覧ください。)
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category: 森・山

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コメント

雨の御岳も良いですね

sizukuさん
カキコが無いので忙しいのかなー?
といろいろ考えてしまいました。お変わりないようで安心しました。

ジーク #Uwmuu2Zg | URL | 2009/11/26 22:15 - edit

ジークさんへ

ジークさん、こんばんは(*^_^*)
なかなか、更新できなくてご心配お掛けしてすみませんm(__)m

この所、仕事も忙しく残業が多いため、なかなか時間がとれず書き込み出来ないで寝てしまったりでした~(^_^;)

週末になると、日曜日には、元気に山を歩いていますのでご安心くださいね。

ジークさんの膝の具合も回復された見たいですね。
もう少し先になってしまいますが、また、プチ遠足をしましょうね(^^)

sizuku #a8vfL3MM | URL | 2009/11/26 23:27 - edit

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