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風立ちぬ

日々の想いを風に乗せて…

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イーハトーブの旅(最終章) 

いつまでも、風を感じて川岸を歩いていたい…
そう、思えるイギリス海岸に心を残しつつ、わたしたちは北上川沿いに続く国道を走りだした。
行きかう車もそれほどない道を快適に走り続ける。相変わらず広大な田園風景が続く道だ。

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片側は、こんな風景の中を釜石線の鉄路が続く。電車が来ないかなぁと思ったがとうとう見れなかった。

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稲刈り前の田んぼの畦で、おじさんたちが話ている。長閑な朝の風景の中を走り抜ける。

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金色の田んぼの中に、こんもりした森があり、小さな神社があった。
狛犬が、ひっそりと稲穂を見つめ佇んでいる。
立ち止まって、写真を撮りたい風景が現れる度、「アイリス、ちょっとだけいい?」なんて前を行くアイリスに叫んでは、自転車を止めてシャッターを押す。慌ててるから当然写真は良い写真はない。

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わたしたちは、『きつい~!!』なんて言いながら、大きな上り坂を喘ぎながら頑張って登った。こんな時、ママチャリは重い…マイ自転車で、軽快に走れたらなぁ…なんて思ったりした。

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30分ほど走り、ようやく道は北上川を渡る大きな橋に差し掛かった。
川幅が尋常じゃなく広い北上川を渡るので、橋はかなり長い…
歩道は、車道より一段高くなっていて、1mほどの幅しかない。片側は車道を走り抜ける車、片側は高さ1メートルほどの欄干を挟んで川上川…
自転車に乗って走っていると、欄干は無いに等しい。フラッとしたらそのまま川に落ちそうだ。
アイリスは、頑張って走り続けている。ちょうど橋の真ん中に行きついたあたりで、わたしはギブアップ。
自転車を止めた。わたしが降りるとアイリスも自転車を止めた。
「ちょっと、怖いから押して行こうよ!」『うん、わたしも、もうダメと思ってた!』
車の音にかき消されそうだから、大きな声で叫ぶように言って、お互いに笑ってしまった。

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止まったら、すぐ、写真を撮るわたし、アイリスもカメラを構えた。
『うわ~!くらくらする~!』「ほんと、目まいがしそう!」
北上川の流れは、絶え間なく波を抱いてとうとうと流れ、対岸の岸辺に続く林は美しかった。

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月見草咲く土手から眺める田園風景。
田舎の景色に、レモン色の月見草は、とても良く似合うと思う。
ちょうど、主人の田舎を訪れた時、こんな写真を撮った事があったなぁと思いだしたりした。
主人の田舎は安曇野だけれど、ここほど広大ではないけれど良く似ているのだった。

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やがて、田園地帯を抜け、新花巻の駅近くの踏切を渡り、山へと向かっていく。
童話館、イーハトーブ館、賢治記念館、賢治ゆかりの記念館が広い森や丘の上に点在している。距離が離れている上に、一つのテーマパークだけでも大きいので、短時間で全部回るにはかなり忙しいのだった。
そして、小高い丘の上にあるので、緩やかだけど長い上り坂でかなりキツイ。
わたしたちは何台もの車に追い越されながら必死で登った。
まず、ここまで自転車で来ているのはわたしたちぐらいのものだった(笑)

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最初の童話館に着き、駐車場の片隅に自転車を止めて歩き出す。
アイリスは時計を眺めながら『今、11時だね。イギリス海岸で30分ほど過ごしたか
ら、ここまで花巻から1時間ちょっとかかってるね。帰りはここを13時には出発しないとね。
だいたい1館の見学時間は30分ぐらいと言うことで。』
「了解、お昼は、花巻の駅に着いてからが良いね。でも、もし、無理そうなら全部回らなくても良いよ。また、いつか来た時に回ればいいんだから。」
わたしたちは、そんな会話を交わしながら、童話村のゲートをくぐった。

まず迎えてくれたのが、賢治の童話から飛び出したような、電信柱の兵隊が現われた。

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ヤマナシの石碑も。こんな可愛いブロンズ像も、まだまだ、森の中の小道にはたくさんの童話の主人公たちが潜んでいそうだけれど、わたしたちは童話館を目指した。

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森の入口には、一本だけ美しく紅葉した楓の木があった。
秋の緋色に、わたしはほんのしばらく心を奪われた。ひそやかに秋は歌っているんだ…

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広々とした緑の芝生の中にある真っ白い円筒形の建物の前に、特徴のあるアーチが続いている。
数人の人々が、ゆっくりとした足取りでそのアーチの下を歩いていく。
遠くからその光景を見たアイリスが、『サザンクロスに向かって歩いていく人たちの列のようだね。』と、つぶやいた。
少し腰の曲ったおじいさん、お母さんに手を引かれた子ども、振り向きながら進むお父さん、若者たち…わたしも、アイリスが思い描いている光景が手に取るように分かる気がして、頷いた。

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アイリスもまた、そのアーチの道をゆっくりと歩き出した。
やはり、銀河鉄道をイメージしているのだろう、アーチの両脇の地面には黒い石の上に銀色のボールが散りばめられ、星座の形が描かれていた。

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芝生のオブジェも素敵!

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童話館に入って最初のホールは、真っ白な部屋だった。メルヘンチックな白い椅子が置かれ、人々は思い思いにその椅子に座ってみたりしていた。
壁には白いコートと白い旅行カバン…照明の柔らかさが、なんともいえない雰囲気を醸し出していた。

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次のホールは宇宙をイメージした部屋で、天井には無数の電飾で飾られた星座が瞬き、
床と壁に張り巡らした鏡に映りこんで、さながら夜空の空間を浮遊しているような感覚になる。
ファンタジックでとっても美しく、わたしたちはうっとりとしながら通り抜けた。

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次のホールは、水底の青を表現した部屋。回り灯篭の中を時折り、真っ赤なカニの姿が現われては消えた。
ゆらゆらとした水底をカニの親子が歩いていく、ヤマナシのお話を連想する部屋だった。

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その後、いくつもの童話の場面から作ったジオラマや作品のパネルなどを見てから外へ出た。
芝生の丘に何棟かのログハウスが立っていて、それぞれ、鳥、動物、森、花、虫などに分かれ展示されていた。
“賢治の学校”と、名付けられ楽しく学習できるようになっている。
時間があればもっとゆっくり回りたいが、駆け足で次のイーハトーブ館へと移動する。

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イーハトーブ館は、水を湛えた建物が美しかった。
今日は曇り空だけれど晴れていたら青空を映して素敵だと思う。

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宮沢賢治に関するさまざまなジャンルの芸術作品、研究論文を数多く収集し一般に公開しているのだという。

賢治の童話を題材にしたブロンズ像が多数展示されていた。

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イーハトーブ館の敷地には、賢治が残した設計図から作った日時計と花壇がある。
賢治はそれぞれの花の特徴を考慮した花壇の設計図も多数残しているそうで、その才能の多彩さにも驚かされる。

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そして、この花壇のある斜面を登り上げると丘の上に“宮沢賢治記念館”があるのだ。
わたしたちは、息を切らしながら斜面を登り上げた。

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“宮沢賢治記念館”には自筆の原稿や、楽譜、書簡、愛用のチェロ、レコードなどが多数展示されていた。
アイリスは“永訣の朝”の詩の前で長いこと立ち止まっていた。
賢治の妹のトシが亡くなった朝のことを書いた詩で、岩手弁で書かれた言葉がなおさら、深い悲しみを語っている。トシが最後の時に、賢治に、庭の松の枝に積もった雪を取ってきて欲しいと頼む、
「あめゆき とてちて けんじゃ」の言葉は哀しくも健気で美しい。


トシは賢治の最高の理解者であったのだという。
トシが愛用していたと言うバイオリンを見つめながらアイリスはポツンとつぶやいた。
『トシが亡くなったのは26歳、今のわたしと同じ年、短すぎる生涯だよね。
賢治さんの悲しみがとってもよく分かるよ。わたし、今回の旅で、トシさんにも逢いたかったんだ…』

「そうだったの…今日ここに来て、トシさんに逢えてよかったね。」
『おかあさん、賢治さんは、28歳の時農学校の教師を辞めて、新しい道を歩き始めているでしょう。きっと、トシさんの分も一生懸命に生きようと思ったんじゃないかしら?
わたしも、諦めないで自分のやりたいことを始めたいって思ったんだ。まだ、遅くないよね。』

わたしは、「もちろんよ!まだ全然遅くないよ。自分のやりたいことに気付いたら、
それを始めるのに遅いなんてこと無いんだよ。」と、言いながら、娘の透明に澄んだ感受性を羨ましく思った。
そして、人生を重ねて曇ったわたしの心を払拭してくれるような娘の感性に出逢えたこの旅は、何にも変えがたい時間だったと改めて思えた。

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賢治さんが好きだった新世界交響曲や田園や賢治さんが作曲した星巡りの歌などが、
静かに流れる館内で、時間の許す限り、わたしたちは思い思いに過ごした。
ふと、周りを眺めると、見学者の中の何人もの人たちが、わたしたちと同じように、
一つ一つの作品や展示物の前でじっと立ち止まり、見つめ、耳を澄ましている姿が見られた。
みんな、きっと賢治さんを好きな人たちなんだと思えて、ちょうど羅須地人協会ですれ違った人と同じように親近感を感じたのだった。

『もっとゆっくり見たいけれど、そろそろ行こうか?』
「そうだね。その前に、あの景色を見て行かない?」わたしたちは、賢治記念館の外れにある展望台に立った。
ちょうど、わたしたちが自転車で走ってきた風景が手に取るように眺められた。
『うわ~!あの道を走ってきたんだね。あの橋も見えたよね!』
「うん、よく走ったよね!また、これから、あの風景の中を走り抜けるよ!」
『素敵!よく目に焼き付けておかなくちゃぁ…』
これで、この旅も終わってしまう…そう、思ったけれど、ふたりともその事は口にしなかった。

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わたしたちは、また、あの長閑な田園風景の中を走り抜けた。
『稲穂の田んぼも良いけれど、稲刈りが終わった後の田んぼも良いね~♪』とアイリスが言う。
「本当だね…」と頷きながら、わたしはカメラを向ける。

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「ねぇ、アイリス、この田園風景の中で、あの田んぼのあぜ道にでも腰を下ろして賢治さんの物語を、ひとつ読み上げてみたいね。」
『うん、どこかに書いてあったよね。賢治さんが好きだった田園を聞きながら、
この物語が生まれた風土の中で物語を読めば、賢治さんの声が聞こえてくるって』
「そうそう、その言葉が分かるような気がしたよ。今…」
『今度来た時には、きっとそうしようよ!』

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この橋を、よく自転車で途中まで渡ったよね。なんて、笑いあいながら川上川を渡りきった時、
『来た時とは違う道で帰るけれどいい?たぶん、帰れる自信があるから。』とアイリスが提案した。
わたしは、アイリスに任せることにした。
アイリスは来た道とは違う、田んぼの中の農道を巡るように道を選んでいく、
大きな屋敷林のある農家の庭先で、脱穀作業をしているところに出逢ったり、
家族総出で稲穂をはさ掛けに掛けている脇を走り抜けたり、ホームだけの無人駅を通り過ぎたり、
時間がないから写真には撮れなかったけれど、車窓を流れる風景のように移り変わる素敵な風景を胸に焼き付けた。

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ふと、見慣れない風景にわたしは自転車を止めた。アイリスも気になったらしい。
神社の前に大きな石が何個も並べられているのだった。
数枚写してすぐに行こうとしたのだが、写真を撮っているわたしの姿を見つけて、おじさんが出てきた。
『この神社を写真に撮ってる人を始めて見たよ』
聞けば、この石は、山に登る度に記念に建てるのだという。
『よく見てごらん、山の名前が彫られているだろう。』なるほど、早池峰山、鳥海山、月山、岩木山などの名
前が読めた。
わたしたちは感心しながらもおじさんの話が長いので、だんだんと時間が気がかりになった。
やっとのことで話を切り上げおじさんにお礼を言うと、『また、いつか花巻においで』
と見送ってくれた。やさしいおじさんだった。

こうして、わたしたちは予定通り花巻に着き、自転車を返しに行ったが、また、店番のおばさんがいない。
この時も他のお客さんが、家の中に入って見つけてきてくれた。

『いったい、あのおばあちゃんは、家の中のどこにいたんだろうね。』
「それにしても、最後まで、スリリングだったね。」なんて、アイリスと話しながら、駅前で昼食を済まし釜石線に乗り込んで新花巻へと向かった。
車窓には、今しがた走ってきた風景がのんびりと広がっていた。

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『ああ、終わってしまったね…』「いよいよ、岩手とお別れだね。」
新幹線のプラットホームで電車を待ちながら、終わっていく時間が名残惜しくて、わたしたちは涙ぐんでしまった。
寂しさと同時に、わたしたちの胸には溢れるほどの思い出と満足感で満たされていった。
これほどの素敵な旅は、もう2度と出逢えないかも知れないけれど、しあわせだった。
「アイリス、ありがとう…」今回ほど、娘を頼もしいと思ったことはなかった。

そして、旅を終えて時間が経つごとに思い出されるのは、新花巻駅の案内所の女性だったり、
ご飯粒をいっぱい付けて現われた貸し自転車屋のおばあちゃんだったり、
稲荷神社の前で話し込んだおじさんだったりするのだった。

きっと遠い将来、いつの日か、アイリスもこの日の記憶を懐かしく暖かく思い出すのに違いないと思った。

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イーハトーブの旅、美しい旅でした…
これで、わたしのお話は終わりです。
長い長い、旅行記を最後までお付き合いいただいた方、ありがとうございました。

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コメント

しーちゃん、長編レポお疲れ様でした。
そして賢治さんの故郷への想い出深い旅が出来て良かったですね。
それも母娘が同じ憧れや思いをもってのイートハーブの旅がが出来たなんて最高ですね。

自転車で頑張って二人で走ったことも楽しい想い出となるでしょうね。
他にも一杯思い出てんこ盛り♪ 素敵でしたね(^_^)v
 
何だかすごく羨ましい気もしましたよ(*^_^*)

お千賀さん #JalddpaA | URL | 2010/10/15 17:27 - edit

ちかちゃん、長い長いレポを読んでくださってありがとう(*^_^*)
今回の旅は、本当に思いがけないものでした。
わたしは、もう、一人では絶対に行くことは出来ないと諦めていました。
主人も一緒に行ってくれる人ではありませんし…
ところが娘が突然、『宮沢賢治に逢いに行かない?』と誘ってくれた時には夢かと思いました。
多分、誰にも花巻に行きたいなんて言った事はなかったから…
不思議ですね。母娘でびったりと息が合うのです。
わたしの人生で、きっと一番思い出に残る旅だったかも知れません…(大げさですね)(笑)
だから長々と書いてしまったけれど最後までお付き合いしてくださってありがとう!!

sizuku #a8vfL3MM | URL | 2010/10/16 09:34 - edit

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