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風立ちぬ

日々の想いを風に乗せて…

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イーハトーブの旅(イギリス海岸へ) 

今日は2日目にして旅の最終日、夜行発1泊2日の旅はあっという間だ。
そして、午後3時50分には新幹線に乗り、この旅は終わってしまう。
盛岡から遠野、そして花巻へ、昨日も一日目いっぱい動いた。
今日もまた、花巻から新花巻界隈を自転車で走り抜ける予定だ。
わたしたちは、始発のシャトルバスに乗るべく、早朝から支度を始めた。
昨夜の雨は上がり、ホテルを出発するころは、朝靄が立ち込めていた。

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花巻の駅には8時半についた。いくつかのお土産物屋さんと食堂がある小さな駅だ。
わたしたちは、まず、駅のコインロッカーにボストンバックを預け、身軽になってレンタサイクルのお店を探した。
本当は新幹線の駅でもある新花巻駅にレンタサイクルがあれば良かったのだが無いので、ここ花巻の駅で借りて新花巻界隈を回り、もう一度自転車を返しに来て、電車でまた新花巻駅へと向かうという、ややこしい時間ロスの道順をとらなければならない。
それでも、昨夜わたしたちは地図を眺めながら、なるべく効率よく回れるよう知恵を絞った結果だった(笑)
静かな駅の構内や街の中には賢治ゆかりのグッツがあって、なかなか楽しい。そんなものを見ながらレンタサイクル屋さんを探した。

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レンタサイクル屋さんと言ってもパン屋さんが間借りでやっているもので、古びた数台のママチャリがあるだけだった。わたしたちがドアを開けてお店の中に入って行くと、地元の方らしい、おばあちゃんが食パンをぶら下げて立っていた。「おはようございます。」と挨拶をすると、おばあちゃんは、『今、お店の人がいないから、わたしもパンを買って帰れないでいるのよ。さっきから呼んでいるんだけど出て来ないのよね。』と言う。
そして、『ちょっと待っててくださいね。中に入って呼んでくるから。』と言いながら家の中へ入って行ってしまった。家の中をくまなく探したのか、しばらくたってやっとお店のおばあちゃんが出てきた。
このおばあちゃんが、またユニークで話し好き、わたしたちはやっとのことで、錆びてかなりボロボロの自転車を借りることができた。
『この自転車、大丈夫かな?』とアイリスが苦笑いした。わたしたちはブレーキを調べてみて大丈夫そうなので出発することにして古いお店が立ち並ぶ花巻の町を走り抜けた。

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まず最初に目指すのは、賢治が“イギリス辺りの海岸を歩いているようだ”と言って名付けたというイギリス海岸へ行ってみることにした。
自然と地図を片手に持ったアイリスが先を行く。昨日もそうだが今日もアイリスが主導だ。
アイリスが小学生の頃から、よく山へ連れて行ったがいつもわたしの後を着いて来ていた。
それが、いつの間にかこうしてわたしを導いてくれているようになった。
わたしは、颯爽と前を行く娘の後ろ姿を頼もしく思ったのだった。
駅からの坂道を走り抜け“賢治さんの心象の小径”という、川岸の道を行く。

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アイリスが小さな木の橋に差し掛かると、アオサギがゆっくりと頭上を羽ばたきながら飛び去って行った。
『おかあさん、すごい!アオサギが頭のすぐ上を飛んで行ったわ!川にいたのね!』と、アイリスが叫んでいる。
「きっと、魚を捕っていたのよ。小魚がたくさんいるのが見えるよ。きっと、カワセミもいるかも知れないね。」

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アイリスは、自転車を止め橋の欄干から身を乗り出して川の中を見つめた。
『あっ!本当!たくさんの小魚の群れがいる。時々、お腹が銀色に光るわ!』
きっと、アイリスも賢治の童話“山梨”のカワセミが魚を捕るシーンを美しく書きあげた一説を思い出しているに違いない。
嬉しそうな娘の声を聞いて、わたしもうれしくなるのだった。

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やがて行く手に、イギリス海岸の看板が見える。イギリス海岸…なんともロマンを掻き立てる響きだろう。
賢治は造語の天才だと思う。イーハトーブと言うのも生まれ故郷の岩手からイ…ハ…テ…を文字って付けたもの。
賢治は故郷を愛し、今生きているこの世界をドリームランドにしたかったそうだ。
ユートピア(理想郷)ではなくてドリームランド、理想郷は手の届かない架空のものだからだ。

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小高い草の土手を登りあげ大きな柳の木の下を通り抜けるとイギリス海岸に出た。
北上川西岸の100万年前の泥炭層の川床で広い川幅のところどころにレンガ色の岩のような川床が出ていたそうだ。
賢治はここで、クルミの化石や偶蹄類(ぐうているい)の足跡化石なども採集したといわれている。
現在はダム整備などで通常は泥炭層は水面下になってしまったそうだ。
『数日の雨で、尚更、水かさが増えて、今日は川床の岩が全く見えなくなってしまっていますが、通常はもう少し見えているのです。今、資料を土手に展示してきましたので、良かったらご覧ください。』と、ボランティアの方が教えてくださった。

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川幅の広い美しい北上川が緩やかに蛇行していく。
『あの、川が曲がって流れていく辺りに賢治さんの生家があったんだね。』
説明書きを読みながら、アイリスが遠くの田園を指差した。
「この川で遊んで育ったんだろうね。そして、大人になってからもこの風景を愛したんだろうね。」

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“賢治が19歳の頃、このイギリス海岸付近をを軽便鉄道が走っていました。
それが銀河鉄道になったと言われています。
イギリス海岸を銀河ステーションとして、ここから天の川に登って、ジョパンニとカンパネルラの銀河の旅が始まったのです。”
そんなふうに書かれた看板。

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わたしは、さらに、ケンタウルスのお祭りの夜、ジョパンニが、眠ってしまった野原はこの土手で、目覚めると降るような星空と天の川が空いっぱいに広がっていたのだろうなと想像した。
ザネリが川に落ちてそれを助けるためにカムパネルラが川に飛び込み助けた後帰らぬ人になってしまった川、
ケンタウルス祭の烏瓜の灯りを子供たちが流しに行った川、
下流の方は川幅一ぱい銀河が大きく写ってまるで水のないそのままの空のように見えた川、
それが、きっとこの川なのだと思った。

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賢治の銀河鉄道の物語が、一枚一枚のパネルになって草の土手に並べられていた。
一枚一枚読みながら、歩いていく。北上川から吹いてくる風が心地よくわたしたちの心をそっと撫ぜて、なぜか胸の奥が優しさに満たされていくような気がした。

きっと、賢治さんも、この川のほとりを歩きながら数数の物語が生まれたのではないかしら
川岸では桜並木や賢治さんが好きだった柳の木々が風に揺れ、彼方には黄金色の田園風景が広がっていた。
故郷の川、北上川は岩手の中央を流れ、やがて太平洋へと注いでいる。
賢治さんの心のなかの原風景を、いま、わたしたちも歩いているんだと思った。

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 ジョバンニは、白鳥と書いてある停車場のしるしの、すぐ北を指しました。
「そうだ。おや、あの河原は月夜だろうか。」
 そっちを見ますと、青白く光る銀河の岸に、銀いろの空のすすきが、もうまるでいちめん、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波を立てているのでした。

ごとごとごとごと、その小さなきれいな汽車は、そらのすすきの風にひるがえる中を、天の川の水や、三角点の青じろい微光(びこう)の中を、どこまでもどこまでもと、走って行くのでした。
「ああ、りんどうの花が咲いている。もうすっかり秋だねえ。」カムパネルラが、窓の外を指さして云いました。
 線路のへりになったみじかい芝草(しばくさ)の中に、月長石ででも刻(きざ)まれたような、すばらしい紫のりんどうの花が咲いていました。


銀河鉄道の中で、わたしは、この一説がとても好きだった。
白鳥座のステーションのパネルに、一頭の蝶が止まっていた。
その翅は疲れて見る影もなくボロボロに痛んでいたけれど、良く見るとクロヒカゲだった。
黒褐色の翅に青い小さな星を散りばめたような丸がある。
『英名はレテ ダイアナ(月の女神)というのだよ、素敵な名前だろう?』そう、あなたは教えてくれた。
わたしが初めて名前を知った蝶だった。
命を全うして、もうじき逝くのだろうか…じっと動かないその蝶に、想いは巡っていた。

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そのパネルの最後の所に、木の根を利用して作られたテーブルとイスが置かれていた。
テーブルの上には手作りの記帳が置かれ、訪れた人が自由に書き込めるようになっていた。

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拝啓 宮沢賢治様

開かれたページにはこう書かれ、賢治の写真がプリントされているのだった。

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賢治さんが好きだったという、フクロウもコスモスの花に埋もれていた。

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まだピカピカの翅を持つナミアゲハ

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可憐なコスモスの花も咲き始めていた。

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咲き残った桔梗の青紫って、物悲しくも美しい…

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わたしたちは、丘の上の柳の木の下に止めておいた自転車に乗って、また走りだした。
これから新花巻の駅を越えた丘陵地帯に建つ、童話村、イーハートーブ館、宮沢賢治記念館を巡る予定だ。
(続く)

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コメント

イギリス海岸は美しい北上川のほとりに位置するのですね。
とても美しい川と風景を何度も見ていました。

ここで(銀河鉄道の夜}を書き上げたのですか。パネルを見ながら川ぞいを歩くと、きっとあの不思議な物語の中に自分が入りこんで行くようですね。
しいちゃんの写真と美しい文章を読みながら、私も行ってみたいなあと、しみじみ思いました。

はるか #mauyLjdI | URL | 2010/10/11 22:43 - edit

はるかちゃん、こめんとありがとう(^^♪
ちょっと曇り空でしたけれど、写真を楽しんでいただけて良かったです。
わたしの写真より、もっともっと、広大で美しい場所でしたよ。
空がとっても大きかったです。
はるかちゃんと、この土手に座り、夜空を見上げて話し合ってみたいですね。
遠く、鉄橋を渡って行く夜汽車を見て、賢治さんは銀河鉄道の旅を空想したのでしょうね。

sizuku #a8vfL3MM | URL | 2010/10/13 22:57 - edit

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