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風立ちぬ

日々の想いを風に乗せて…

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イーハトーブの旅(渡り温泉の夜) 

新花巻の駅に着く、手前でお祭りのために道路規制がされていた。
すぐ目の前を山車を引きながら町の人々が通り過ぎた。
この時は、新花巻の駅に着くことばかり考えていたので、お祭りを観る余裕がなかっ
たが後で、このお祭りが花巻祭りだと気付いた。
もしかしたら鹿踊りの実演がどこかで見ることができたのかも知れない。そう思うと少し残念な気がした。

何とか滑り込みで新花巻の駅に到着し、無事レンタカーを返してホッとしたのも束の間、これから列車で2駅先にある花巻の駅に行き、5時初のシャトルバスに乗らなければならない。
わたしたちは、駅の案内所へと向かった。
カウンターにいた女性に「次の列車は何時ですか?」と、尋ねる。
すると女性は目を丸くして、『え~!?大変、電車は今出てしまったばかりよ。次は
1時間後になりますよ。』と言うのだった。
仕方が無い、タクシーで行こうかと考えて、「わたしたち、渡り温泉に行くんですが…」と言いかけて、カウンターに貼られた、シャトルバスの時刻表が目に留まった。
「あら?新花巻の駅からもシャトルバスが出ているんですか?」と尋ねると、女性は、『ああ、良かった!渡り温泉に行くんですか。なら、大丈夫、ここからシャトルバスに乗れますよ。あと、20分ぐらいで来ますからこの辺でお待ちくださいね。本当に良かったわ~!』と、胸を撫で下ろすのだった。

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その仕草が、とっても大げさで、でも、とっても可愛くて、とても好意的で温かかった。
見知らぬ旅人のわたしたちをまるで身内の者のように親身になって心配してくれているのだ。
東京では、こうは行かないだろうなと思った。きっと事務的に案内してくれて終わりだろう。わたしたちは、その女性の一つ一つの仕草や、言葉のお国訛りの温かさに思わず笑顔になるのだった。
『あのね、バスの乗り場はね。ちょっと、こちらへお越しください。』そう言って
女性はわたしたちを窓際へと案内してくれ、身振り手振りで、駅前のバス停の奥を指差した。
『時間が来たら、あの辺りでお待ちください。そしたら、旅館のバスが来ますから。』
ジーンと来るほどの、温かさと優しさに、わたしたちは心からお礼を言って頭を下げた。

バスを待つ時間、わたしは、駅に貼られた鹿踊りのポスターをじっと眺めていた。
ひょうひょうとした草原に三人の踊り手が、太鼓を打ち鳴らしながら踊っているポスター。
わたしは、すぐに、地元の下名栗の獅子舞のことを思い出してとても良く似ていると思った。
鹿踊りはまだ、見たことが無いが踊り手が歌いながら踊るのだと言う。
とても勇壮な舞いだと聞くが、何故かほのぼのと温かみのある舞いなのではないかと思えた。
今日出逢った花巻農学校の生徒たちの姿が浮かんだせいもある。
そして、遠い昔に賢治が見つめた鹿踊りが目に浮かぶのだった。

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やがて時間になった、わたしたちは、先ほどの案内の女性に挨拶しようとカウンターを振り返ったがそこには違う女性が座っていた。
『いつのまにか、さっきの人、違う人と交代してしまったんだね。いい人だったね…』とアイリスがしみじみ言った。
「うん、旅は、人だね…」と、わたしも答えて駅の待合室を通り抜けながら、ふと、人々の会話が耳元を通り過ぎていくのを感じた。
そして、啄木が、
“ふるさとの訛り なつかし停車場の 人ごみの中にそを聞きに行く”と、詠んだ歌を思い出していたのだった。

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渡り温泉は、花巻の町からさらに奥の山の中にある。
車窓には昼間アイリスと駆け抜けた景色が夜の帳に包まれながら流れていった。
『おかあさん、見覚えがある景色だね!昼間走った道と同じ道を走っているよ!』
「本当に、今日は良く走ったものね。アイリス、お疲れ様。ホテルに着いたらまず、温泉に入ろうね。」
ホテルは従業員のサービスも良くとても綺麗で、温泉も食事も素晴らしくて言うことは無かった。

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ホテルについてすぐにロビーで抹茶のもてなしを受けた。
浴衣の上にはおる羽織も好みの柄を選ぶことが出来た。こんなところが女性に人気があるのかも知れない。
夕食は雰囲気のあるレストランに案内された。『とても良いお席にご案内できます。』そう言われて通されたテーブルは吹き抜けの総ガラス張りの窓際の席だった。
わたしたちはライトアップされた日本庭園を眺めながら、乾杯した。

ゆっくりと出される料理に舌鼓を打ちながら今日の出来事を話したりする。
BGMは、ピアノの生演奏。庭園に植えられた桂の木や楓の木が、まるで紅葉しているように美しくライトアップされていた。
『あっ!おかあさん、今、鯉が跳ねたよ!』とか、
「アイリス、あの木はカツラの樹だよ。日原のカツラを思い出すなぁ…」とか。
『お料理、おいしいね。お父さんにも食べさせてあげたいね』
「うん、おにいちゃんやおねえちゃんにもね。いつか、家族で来れたら良いね。」とか。

最後に、デザートとコーヒーが運ばれてきた時、ピアノがハッピーバースデー♪の曲を奏でだした。
見ると、一組のカップルの女性にローソクのついたケーキが運ばれていた。
スタッフの贈るにこやかな笑顔に周りの席から静かな拍手が送られた。
『お誕生日の演出なんだね。便乗で悪いけど、おかあさん、お誕生日おめでとう。』
とアイリスが言ってくれた。「うん、ありがとう、最高の誕生日だったよ。」

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宿に着いた時から降り始めた雨は、本降りになっているようだった。
わたしたちは、ちょっぴり窓を開けベランダに出てみた。
今夜は月も星も見えないけれど、しっとりと雨の森の匂いがした。

ふかふかのお布団に潜り込んで、『今夜はぐっすり眠れそうだね!』とアイリスが笑った。
「おやすみ、アイリス。ゆっくり寝てね」こうして、わたしたちの旅の、長い一日が終わったのだった。
(明日はいよいよ、花巻を自転車で横断します。よろしかったらどうぞ)(続く)

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