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風立ちぬ

日々の想いを風に乗せて…

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三人遠足(*^_^*) 

8月11日(土)奥多摩分校の初代生徒のジークさんとこいちゃんとわたしの三人で
久々の三人遠足してきました。
行き先は、こいちゃん提案の昭和記念公園のサギソウ祭りにお邪魔することにしました。
集合は、ゆっくりめの9時30分に西立川駅の改札です。
今日は、のんびり公園内を散策し、積もるお話をしましょうという企画です。

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でも、一番遠いジークさんは1時間も早く着いてしまったらしいです。
ジークさん、お待たせしてごめんなさいね。もっと、早く行けば良かったですね。

なにはともあれ、三人で合流し、西立川口のゲートをくぐります。
お天気予報が雨と悪かったので、日曜日を繰り上げて土曜日にしましたが、
終日花曇のお天気でした。
連日の猛暑も少しは緩和されたようですが、やっぱり暑いです。

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まず、こいちゃんのお知り合いのサギソウ保護の会の方々にご挨拶です。
こいちゃんは毎年、サギソウ祭りの写真を撮り続けていて今年、10年目になるそうです。
展示室には、こいちゃんが手作りで作成された写真集が展示されていました。
多くの方が手に取り眺めていました。継続されることが素晴らしいですね。

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この会では、サギソウの鉢を貸し出してくださり、自分の好きな場所で、
写真を撮ることができます。この日、野鳥の池のほとりでは、ミソハギの花が
見頃を向かえとても綺麗に咲いていました。
わたしたちは、このミソハギの中でサギソウを撮ることにしました。

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ミソハギは精霊花とも呼ばれお盆には欠かせない花で、この花を水につけて供え、
お盆の精霊棚を清めるのだそうです。
水辺のミソハギは、とても美しく、まるで彼岸の光景のようにも見えました。

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ピンクの花の間を白鷺が優雅に飛んでいくように見えます。
サギソウには思い出があって、わたしの父が大事に育てていました。
花が咲くと、母と一緒にいつも鉢を届けてくれ、花が終ったら持ち帰り、
世話をして、また次の年、届けてくれていたのでした。

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その頃は、あまり有難みを感じていない、不詳の娘でしたが、今こうして眺めると
清楚な白い花を、鷺に見立てた人ってすごいなぁとつくづく思います。
そして、そんなサギソウを慈しみ育てていた、寡黙な父の姿を思い出します。
その花をとても好きで、花を愛でて喜んでいた優しい母の面影も…
父母が旅立って10年、もう、実家には父がそだてた花々の姿はありません。

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年の頃が、あの頃の父に似た、ボランティアの方が、来春3月の植え替えじきに
講習会をしますので、サギソウを育ててみませんか?と声をかけてくださいました。
なんとなく、もう一度サギソウを咲かせてみたくなり、申し込んできました。

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野鳥の池の周りには、大きな木立が日陰を作っています。
秋には、この鈴懸の木に、たくさんの鈴をぶら下げたような実がなります。
深まりゆく秋の新宿御苑で、鈴懸の並木道を歩きながら、詩の話をしていた…
学生時代がふっと蘇りました。

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池のほとりには、じっと、一羽のアオサギが佇んでいます。
アオサギって、哲学者見たいですね(笑)

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岸辺の小道を行けば、カルガモたちが寄ってきます。
大きな鯉たちも寄ってくるので、戸惑い顔のカルガモくんです。

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睡蓮の池は、もう、見頃を過ぎていましたけれど、咲き残った花が、
水辺に浮かぶと、まるで、モネの絵画のようです。

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ハスももう残り花です。

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夏水仙は、優しいピンクの花束のように

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カノコユリの花色が、可愛くて、反り返った花びらもとっても元気

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ヤブミョウガの濃紺の実

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ヒオウギ

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ギボウシ

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百日紅が、旬です。ふわっとした花と、すべすべの幹がとっても好きです。

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紫陽花が、まだ咲いています。

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緑が濃い木陰の池に、筏に植えたサギソウが浮かべられていました。
水面に映りこむ姿が綺麗です。

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水面には、無数のトンボたちが飛び交っています。
なかでも、真っ赤なショウジョウトンボが、綺麗でした。
飛んでる姿を撮ろうとしたけれど、無理ですね^_^;

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それにしても、なんて鮮やかな緑でしょうね…

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ニイニイゼミの抜け殻です。どうして、二つ重なっているのかな?

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みんなの原っぱと桜の巨木が立ち並ぶ森を抜け、日本庭園へとやってきました。

今日はシンボルツリーの下にも人影がまばらです。暑いですものね。

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入り口にはあまりの暑さに、野良猫くんが、眠りこけていました(笑)

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桔梗の紫がハッとするほど綺麗、好きな花です。
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白花の桔梗もありました。薄い紅の線を花びらにを挿したようで、
なんとも日本的な美しさでしょうね。

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小さな流れにはギボウシの花が咲き乱れ、飛び石が続いています。

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もう、色づき始めた木がありました。

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飛び石を渡って行くと、大きな池に出ます。

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静かな水面は空を写し、大きく広々と開けた空間は気持ちがいいです。
お茶室があり、ここで、お茶もいただけるのですが、今日はもう、
終わってしまったみたいでした。

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池の上には、たくさんのトンボたちが飛び交っています。
シオカラトンボ、コシアキトンボ、ショウジョウトンボ、ギンヤンマ、
ウチワヤンマ、そして、美しいチョウトンボがたくさんいました。


わたしは、夢中で追いかけました。

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ハスの花に泊まった姿、絵になります~♪

シオカラトンボ
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今日は、広角レンズしか持ってこなかったので、みんな遠くって…

ウチワヤンマ
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それでも、どうにか、ゲットしました(^_-)

ショウジョウトンボ

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チョウトンボ

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亀の形に作った亀島

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こちらは、本物の亀、ミドリガメでしょうか?かわいいです。

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一生懸命泳いでます。


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金魚の回遊?金魚も群れで泳ぐのですね。

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そして、最後は盆栽を見てきました。ここの盆栽はとても美しいのです。
まるで、何百年も森の中で生き抜いた樹のような生命力を持っています。
この樹たちを見ていると、宇宙へ繋がって行くような錯覚さえ覚えます。
盆栽って、奥が深いと思いました。

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さっきの猫君、まだ、爆睡中(笑)

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公園の中のレストハウスで、お昼にしました。
薬膳カレー…なかなかおいしかったですよ。

いっぱい歩いて、いっぱい写真を撮って、いっぱいお話しましたね。
ジークさんがお元気そうで、とっても嬉しかったです。
なかなか、三人遠足が出来ませんが、涼しくなったらまた、行きましょうね。
帰り際、嬉しそうな笑顔を見せて、『今日は、ありがとう。楽しかったよ』
そう言ってくださいましたね。
もっと、いろんなところにご案内したいと思いました。

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森の中にたくさん吊るされていた風鈴が、ひと時の涼を運んでくれました。
こいちゃん、じーくさん、楽しいひと時をありがとうございました。

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category: 公園

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ふるさと 

白馬岳から無事下山し、ふるさとの温泉に宿泊しました。
翌朝実家に寄り、そのあと姉の家に寄りました。
久しぶりに逢う、ふるさとの人たち。
母がいた頃は、毎年夏には帰っていましたけれど、足が遠のきました。

帰り道、ほんの少し遠回りして、田舎の景色を眺めてきました。

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緑の稲穂が美しいです

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雪の多い土地だけに、屋根の形に特徴があります。
緑の中に点在する、このトタン屋根の風景が民話のふるさとみたいで
何とも言えず、好きでした。
安曇野さんが、育った風景を、わたしは知らないけれど、
ふるさとに帰った時の、風や光や、稲穂や夏草の匂いのなかに、
なんとなく、それを感じることが出来るような気がしました。

早朝の縁側から眺める爺ヶ岳…美しかったなぁ

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少し山道を上がれば、小さな棚田が広がっています。

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今日は曇っていますが晴れた日なら、北アルプスが一望できます。

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長閑な田んぼの中の道の駅には、花がいっぱい

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安曇野さんのふるさとは、光と風と、干し草の匂いのする懐かしい水の村。
初めて訪れた時、そう思ったけれど、今も変わらない風景でした。

ふるさとは、遠きにありて思うもの、
そして、悲しくうたうもの
よしや、うらぶれて
異土の乞食(かたい)となるとても
帰るところにあるまじや…

室尾犀星は、そう謳ったけれど、やっぱり心が帰る場所なんだと思います。
わたしは、安曇野さんのふるさとが好きです。

深まりゆく秋には、唐松が金色に燃えるようで、
その上には、新雪を纏った北アルプスの峰々が美しく連なっている
一度だけ見た、美しいあの季節に、また、もう一度帰ってみたいなと思いました。

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最終章 夢の後先 

この日、白馬大池山荘はひっそりとしていました。
昨日の白馬山荘や村営の頂上小屋の喧騒からは想像できないほどの静けさです。
まだ時間がお昼と言うこともあるかも知れませんが、ここは、ほとんどの登山者が
通過点としての場所なのかもしれません。

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けれど、通過してしまうのが惜しいほど、火山湖だという大池は、澄んだ水を湛えて
とても美しいです。高山植物の密度は濃くて、たくさんの種類が分布していそうです。
ほんの、登山道脇を通っただけでこの多さですから、池の周りにはどれほどの群落が
あるのか、想像しただけでもワクワクします。

安曇野さんは、わたしの到着を待つ間、コーヒーを買ってきてくれ、小屋の人に栂池まで
あとどのくらいかかるか聞いてきたようです。
山頂からココまで掛かった時間を考えると、4時間以上かかりそうだから、なるべく
早く立ったほうがいいですよ。と言われたといいます。
ゆっくり休んでいる暇はなさそうです。

『時間はぎりぎりだから、なるべく急いで歩かないとダメだぞ。』と、安曇野さん。
「ええ、もう、カメラはしまいましょう。」と、わたし。
わたしたちは覚悟を決め、疲れた体に鞭打って立ち上がりました。
軽い昼食後の13時10分の出発でした。

白馬大池からは、大きな岩が累積した斜面を一気に上っていきます。
疲れていなければ、ぴょんぴょんと身軽に岩を上っていけば、容易に高度を稼いで
いけるような道なのですが、今日はゆっくりと着実に登っていきました。
やがて、上りきって池が見渡せる最後の場所に着きました。「ちょっとだけ待って…」
わたしは、名残惜しくて立ち止まり振り返りました。
「本当に、綺麗なところね。これが、見納めだわ…」
『また、来ればいいじゃないか。ここまでなら来れるだろう。』
「そうね。今度は、ここでゆっくりしましょう。」そう答えたけれど、

もしかしたら、もう二度と来ることは無いかも知れない…そう思えて、
あまりにも心残りな気がして、悲しくなって涙が出ました。
「さようなら、白馬大池…」と、心の中で呟いて思いを断ち切るように、きびすを返し、
もう振り返らずに進みました。

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そこからは、同じような岩ごろの道が続いていました。あたりは、深い霧に包まれ始め、
お天気が変わって来たことが分かりました。
「雨が降らなければいいけれど…」そう呟いて進みます。

どんどん霧が濃くなって、視界が利かないので、岩の上の赤いペンキを目印に進みます。
やがて、大きなケルンがいくつも立っている場所に出ました。そのなかの一番大きな
ケルンに乗鞍岳山頂の案内板が立っていました。

どこまでも、岩が重なる道でしたが、やがて、道は下り坂になりました。
でこぼこの大岩の上を、歩きやすそうな岩を選んで降りて行きますが、岩と岩の隙間に
足を踏み外さないようにと気が抜けません。それに、膝に負担がかかりガクガクです。
とにかく、転ばないように、捻挫などしないようにと細心の注意を払います。

すると、目の前に一羽の雷鳥が現れました。砂浴びをしていて逃げる様子もありません。
安曇野さんが、『やっぱり、撮ろう!』と言ってカメラを取り出しました。
ほんの数分の撮影時間ですが、わたしは、ちょっと休めてホッとしました。

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雷鳥が現れると雨が降るというけれど、まもなくして、小雨が振り出しました。
大雨でないのが救いですが、結構濡れます。わたしたちはザックカバーだけかけて、
先を急ぎますが、岩が濡れて滑りやすくなっています。
気をつけなければと、また、注意深く、降りていきます。

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やがて、小雪渓が現れました。ステップが切ってありますが、霧が深い上に道しるべ
の岩のペンキが見えないので、ちょっと不安になりました。

でも、ロープが渡してあるので、そのロープに沿って降りていけばいいのではと、
踏み跡とロープを頼りに降りていきました。雪渓は思ったよりも短かったのでホッと
したのもつかの間、その先は…やはり、また、大岩の気の抜けない道です。

その角を曲がったら、この岩場は終わるのではないか?と、期待を持って歩くのだけれど
辿り着けば、また、同じ道が続いています。重い荷物が、肩に食い込み足も腰も、
もう限界に来ていました。おまけに、雨で湿度が上がり、灌木に覆われた道は、
やたらと大きなやぶ蚊が、ぶんぶんと飛んであちこち、刺してきてうっとうしいです。

もう、限界だ~!と、心が叫んでいるような気がしましたが、足だけはよろよろと
惰性で前へと進みます。もう、わたしたちが最後かも…と思っていたら、後ろから
一人の青年が降りてきました。反射的に、わたしは道を避けて、「お先にどうぞ」
と、道を譲りました。青年は『ありがとうございます』と追い越して行きます。

少し先を歩いている安曇野さんが『ロープウェイまで、あとどのくらいでしょう?』
と聞いています。青年は『そうですね。あと1時間半ぐらいですね。』と答えます。
『間に合うかな?』と、安曇野さん。『そうですね。休まずに行けば、ぎりぎりで、
間に合うと思いますよ。どうぞ気を付けて』と、青年は答えて降りて行きました。

『時間がないぞ、頑張って歩けよ!』と、安曇野さんに促されるも、フラフラです。
すると、しばらくしてさっきの青年が空身で戻ってきました。
聞けば、下の木道まで降りたものの、わたしたちの事が気になって戻って来たと言います。
『この岩場を抜ければ、あとは、それほどキツイ箇所は無いと思いますので、
ここを抜けるまで、荷物をお持ちしますよ。』笑顔でそういうと、わたしのザックを
担いでくれました。わたしは、かなり限界でしたから、この申し出がどれほど
ありがたかったことか…まるで、地獄に仏のような心境でした。
「ありがとうございます。本当に助かったわ…神さまみたい…」そんな貧弱な
言葉しか出てきませんが、感謝の気持ちいっぱいでした。
しばらくの間、空身で降りることの、なんて身軽なこと…

青年は、わたしのザックを受け取ると『結構重いですね~!これを山頂からずっと
担いできたんですか?凄いなぁ』と、笑いました。

やがて、木道に出たところで、青年はデポしてあった自分のザックを背負いました。
『ここからしばらく木道を行き、また、すぐ樹林帯の下りになりますが、今までの
ような岩石園ではないので、ここまで歩きづらくはないと思いますよ』と言いました。

安曇野さんは、よほど嬉しかったようで、『ありがとうございました。お礼は?』
なんて聞いています。「せめて、お名前だけども」と言いましたけれど、
青年は、『いいえ、また、どこかの山でお会いしたら声をかけてください。』と
言い残し、爽やかな笑顔で風のように去って行きました。

青年が去った後、『本当にいい人だったなぁ…本当に助かった。』と安曇野さんは
心の底から感動していました。「うん、限界だったから本当にありがたかったわ。
わたしには神さまに見えたわ。山の人っていいね~本当に、好青年だよね。」
辛くて堪らなくなった時、思いがけずに、そっと差し出された救いの手…
見ず知らずのわたしたちを助けてくれた青年の優しさに心打たれました。

この時点で、4時でした。あと1時間しかありません。
そして、心地よい木道歩きは束の間で、また、延々とあちこちに岩が転がるような
歩きづらい登山道を必死で降りて行きました。二人とも足は棒のようで、自分の
ものではなくなっていました。『あっ!』安曇野さんが激しく転倒しました。
「大丈夫?」『大丈夫だ、早く、歩け!』そして、今度は私が派手に転びました。
岩に頭をぶつけたけれど、大きな荷物がつっかえ棒になって大事には至りませんでした。

もう、言葉も発せられなくなって、降り続けます。
やがて、遥か下にロープウエイ乗り場の屋根が見えました。見えてからが長いです。
それから30分も歩いたでしょうか?もっと長く感じましたけれど…
ロープウェイの発車時刻の5分前に、泥だらけでヨレヨレになりながら辿り着きました。

辿り着いた時、先を歩いていた安曇野さんが『やったぁ~!!やっと着いた!!』
と叫びました。その瞬間、腰が砕けよろよろとしたので、倒れこむんじゃないかと
思いました。そして、『お前のお蔭で行ってこれたな…』と言われました。
安曇野さんからこんな言葉が出るなんて、思いもよりませんでした。
わたしは、言葉になりませんでしたが、「お疲れ様…」とだけ言いました。

やっと間に合ったロープウェイの窓の外には、越えてきた白馬岳が見えていて、
ああ、なんて遥かな旅を、自分たちの足で歩いて来たのだろうと感慨深かったです。
そのあと、ゴンドラ、タクシーと乗り継いで、やっと旅の起点の白馬駅に戻りました。

帰り道、安曇野さんは、『やっぱり、北アルプスはいいなぁ…』とつぶやきました。
『今度は、もっと楽なところに登ろう』とも言いました。
懲りてないのが可笑しかったです。

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そして、中学生の時に登った白馬岳に、もう一度登ってみたかった。
雲海に登る朝日を、もう一度見てみたかった。
あの、雄大な景色を、もう一度見れて、本当に良かった。と言った安曇野さんの
言葉が心に残りました。
安曇野さんにとっても、白馬岳は、憧れの山だったのですね。

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途中で、もう一泊したら楽だったと思います。でも、そうしていたら、
この達成感は味わえなかったかもしれません。あの親切な青年には出逢えなかった
、人の情けを知ることはできなかったと思うと、これで良かったのかも知れません。

一つの目的に向かって助け合って、励ましあって…
山登りって、やっぱり、人生の縮図のような気がしました。

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  登っていく坂の上の青い天に
  もし一朶(いちだ)の白い雲が輝いているとすれば
  それのみを見つめて,坂を登って行くであろう。(坂の上の雲)

長い長い、レポを最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

category: 森・山

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遥かな山旅 

小屋前での記念撮影も終わり、続々と頂上を目指す人々に混じって、
6時40分、わたしたちも小屋を出発しました。
早朝の空は、生まれたばかりのまぶしい水色の空、何もかもが透明に
澄み渡っているようで周りの山々も笑っているよう・…
今日も素晴らしい晴天が約束されたような感じです。

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今日の行程は、白馬岳山頂を踏んで、そこから東へと伸びる主稜線を辿り、
小蓮華山へ… いくつかのピークを超えて、白馬大池へと向かいます。
そして、白馬大池から登り返し白馬乗鞍岳を越え、栂池ロープウェイまで下ります。

通常の歩行時間は5時間50分とのことですが、昨日のわたしたちのペースでは、
10時間は必須でしょう。
ということは、ロープウェイの最終便の5時20分にギリギリ間に合うかどうかです。
休暇は、あと2日いただいています。わたしは、当初から、ゆっくりと雲上散歩を楽しみ、
白馬大池でもう一泊し、花の撮影や星空などを堪能したいと思っていました。

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けれど、安曇野さんは、どうしても今日中に下山したいと言います。
帰りに大町市の安曇野さんの実家によりお墓参りをする予定です。
できれば故郷でゆっくりしたいのは、人情でしょう。
安曇野さんにしてみれば無理からぬこと、わたしは、夫に従うことにしました。

『昨日のことを考えると、あまりのんびりしてはいられない。さっさと歩くぞ!!』
と、気合十分な安曇野さんに促されての出発です。

歩くたびに高度が増し、景色は刻々と変わっていきます。足元には可憐な花々が、
小さな群落を作って咲き乱れています。チシマギキョウ、ミヤマツメクサ、
タカネシオガマ、ミヤマクワガタソウ、ミヤマミミナグサ、シコタンソウ、
チングルマや、イワウメの果穂など…

まだ、朝露に濡れたそれらのお花たちの佇まいは格別に瑞々しくて美しいです。
ゆっくり写真を撮りたい衝動を抑えながら、頂上を目指します。

チシマギキョウ

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タカネシオガマとイワウメの果穂
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シコタンソウ
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イワツメクサ

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白馬岳の頂では、多くの登山者たちが記念撮影をしたり、山座案内板を囲んで、
360度の視界に入る山々の同定を楽しんでいました。
この円盤状の山座案内板は、風景掲示板と呼ばれ、約187K近くある花崗岩の
巨石で作られているだそうです。

円盤状に山々の立体感を出したレリーフが刻まれ山の名が記された銅版が埋め込まれ
ています。もう、相当古く、風雨にさらされ、あるいは無数の登山者たちがその手で
撫でていったのでしょう。

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磨り減ってしまって、山名を読み取るのが難しいものもあります。
この案内板は、新田次郎の『強力伝』の主人公が、大雪渓を担ぎ上げたものだと、年
配の登山者が話していました。

(抜粋)
…白馬岳へ風景掲示板という巨石(約187K)近くある花崗岩二個を山頂まで運ば
ねばならないが、信州にはそんなことができる強力がおりません。
富士山随一の小宮正作に白羽の矢が立ちます。
富士山しか登ったことのない、この強力は、あの沢から尾根、尾根から沢へと長く続
く道を、あの急斜面を、あの雪渓をどうやって登るのか。…

小宮は、並外れた体力と技術と胆力と白馬の強力仲間からのサポートもって、それを実
行しようとします。

この主人公は実在の人物で、その風景指示板こそが、今、目にしているこの案内板な
のでした。

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彼の偉業に思いを馳せると同時に、昨日、あの大雪渓を一歩一歩を自分の足で進みな
がら、白馬岳の山頂に立ち、遠く、富士山や北アルプスの雄大な山々を眺めている、
そんな体験を、今、実現できたことを感慨深く思いました。

三角点

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いつまでも、その場にとどまって眺めていたいような絶景でしたが、行く手に続く
稜線は、とても魅力的な天空の道でした。さあ、遥かな山旅の始まりです。


白馬岳山頂の案内板、文字は見えない^_^;
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わたしは、白馬岳の頂に咲く、チシマギキョウを見つけました。
まるで、この雄大な眺めを見つめながら咲いているような、孤高の花たち…
この景色こそが、わたしが憧れ続け見たかった景色でした。

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この写真だけは、絶対に撮りたい!!そう強く思って撮りました。
重い荷物にふらつきながらも、しゃがみこんで息を止めて、撮った写真です。
今回の写真の中で、わたしが一番気に入っている写真なんです。

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写真の技術とか、腕とか、そんなものは、この際関係なく、わたしの心の投影です。
忘れがたい憧れ…天空に咲いた、紫のあの花たち…今も、目を閉じれば浮かびます。
苦しい道のりを、上へ上へと目指したのは、この花たちに出逢うためだったといっても
過言ではないと、そんな気がするんです。

一番お気に入りの写真です。
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18歳の時から思い描いてきた、憧れたちがいた処…
大げさだけれど、ああ、生きていて良かったと思えるような、しあわせな瞬間でした。
いろいろあったけれど、ココに連れて来てくれてありがとうと、安曇野さんに感謝しました。

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白馬岳の頂から始まる天空の道は、しばらくの間はなだらかで本当に美しい道でした。
足元に咲き続くお花たちを愛で、行く手に立ちはだかる山々や、眼下に広がる景色を
眺めながら歩きます。右側の信州側は、切れ落ち入り組んだ急峻な谷、一方、左側の
黒部側は、緑なすなだらかな起伏が続いていて不思議な気がしました。
雪渓から吹き上げてくる谷風は、涼やかな冷風で、心地よくて天国にいるようです。

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そんな時、上空を三頭のアサギマダラが戯れながら飛んで行きました。
ひらひら、ふうわりと、まるで里山を舞っている時と同じようなたおやかな飛翔です。

「アサギマダラだわ…」と、安曇野さんに伝えてわたしは立ち止りました。
見上げた目のなかを、アサギマダラの水色の翅が、まるで透き通るようで…
高い青空の中に、吸い込まれるように同化して見えました。

ああ、なんて素敵なんだろう…。そのとき、アサギマダラという蝶を
わたしに教えてくれた人を想いました。
もし、何も知らなかったら、きっとこの景色は見えてはいないのだと思います。
2900メートルの稜線で、わたしだけが見た一瞬の光景。
まるで白昼夢のような気がしました。
アサギマダラたちは風に乗り、たおやかな飛翔で視界から消えていきました。
あんなに可憐な蝶が、稜線を超えていく姿に、じーんと胸が熱くなりました。

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やがて、道は、小石やおびただしい岩の欠片で埋め尽くされた道になりました。
遠目には、歩きやすそうに見えた道が、靴が滑って以外に歩きづらいことに気がつき
ました。
重い荷を背負っていると、余計にもズルッ、ズルッ、足を滑らしながら登るのは大変
でした。

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安曇野さんも『本当に、歩きづらい道だなぁ…』と苦戦していました。
わたしたちは、やっとの思いで、ひとつのピークを登り上げます。そして、ピークに
立つと、今度は下り、大きな岩が累々とした急坂を下ります。下りきるとまた、
新たなピークが続いていました。

『また、登るのか…』と、安曇野さんが、ぼそっと呟きます。
そして、わたしたちは肩に食い込む重い荷を背負いまた、黙々と歩いていきます。

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砂礫の道や、岩ゴロの道のアップダウンが続き、なだらかな稜線歩きといっても、
かなりハードな道でした。
足元に咲き続く花たちだけが、わたしたちを励ましてくれ美しい夢のような稜線でした。
小さな白い石を敷き詰めたような斜面が、なんとなくピンクに見えます。
「あっ!!コマクサよ!!」わたしは、目を疑いました。
高山植物の女王と呼ばれる、憧れのその花が、ずーっと下まで咲き続いているのです。
残念ながら、少し花期を過ぎていましたが、初めて見る可憐な姿に、感動しました。

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タカネツメクサ
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ミヤマキンバイ

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アズマギク

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ウサギギク

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タカネヤハズハハコ

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ミヤマミミナグサ

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ミヤマダイモンジソウ

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イワギキョウ

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這い松

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ミヤマリンドウ

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やがて、鉢ヶ岳の手前に、青い水を湛えた美しい池が見えてきました。
地図を見てみると、長池のようです。池が見えるのはこの辺りだけで、近づくと
見えなくなってしまうとガイドブックには書いてありました。

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三国境の道標が立つ、鞍部に着きました。
三国境とは、文字通り、長野、富山、新潟の三県の境となっているそうです。
ここで、雪倉岳方面に向かう道を分けて分岐を小蓮華山へ向かいます。
遥かな稜線は、白い小石を敷き詰めたような急坂で、歩きづらく、ここでも
後続の登山者に先に行ってもらいながら、ゆっくりと登ります。

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わたしは、荷物が肩に食い込んで、ついに擦り傷が出来ました。
タオルを肩紐に挟んで、少し、摩擦を和らげながら登りますが、どうしても
遅れがちです。先を行く安曇野さんが立ち止まり、時折、振り返っているのが見えます。

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小蓮華山の稜線は坂の上の雲のエンディングに使われている稜線で、それは美しいのだと
よしこちゃんが言っていたのを思い出しました。
わたしは、あまりテレビを見ないので、坂の上の雲も見ていませんでした。
どんな稜線なのかは判らないのですが、『足元から湧き上がったガスが、
さぁーっと晴れていくの。そして、素晴らしい稜線が見えてくるのよ。
山好きな人なら、きっと涙が出るような光景よ』…そう言っていたよしこちゃんの言葉を
思い出しながら、わたしは、稜線の写真を撮りました。

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小蓮華山はいくつものピークがあるので、その度に稜線を撮ってみました。
そして、その中で、この稜線なんじゃないかなと思ったのがこの写真です。
緩やかに曲がり縫うように貫く一本の道…這い松の緑が美しい遥かなる道…
違うかなぁ?

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そして、這い松の中で何か動くものを見つけました。
「あら?ライチョウ?あれ?違う!オコジョよ!!」わたしは思わず大きな声を出して
しまいました。周りの登山者の人も、口々に、『わぁ~!オコジョ!!』とか
『初めて見ましたぁ~♪』とか『かわいい~♪』とか叫んでます。
岩の上をちょろちょろと走り回って、オコジョは姿を消しました。
安曇野さんは、レンズを付け替えているうちにいなくなってしまった
と残念がっていました。

タカネナデシコの群落が綺麗です。

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ハクサンイチゲ

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ミヤマアキノキリンソウ

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ハクサンフウロ

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ハクサンシャジン

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わたしは、写真は鼻から無理と思ったので、ずっと目で追っていました。
小さなオコジョくん、出て来てくれてありがとう。かわいかったです。
その後、岩の間を、虫を追って歩いているイワヒバリに逢いました。
今度は、小さな声で囁きました。「イワヒバリよ。イワヒバリがいる!」
安曇野さんは、今度は望遠レンズが付いていたので、ばっちりとることが出来ました。
すぐ近くまでやってきたイワヒバリくんに、『撮らせてくれてありがとう。』なんて
安曇野さんが言っているので、またまた、びっくりでした(*^_^*)

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そんなことを繰り返し、やっと小蓮華岳の頂上に辿り着きました。長かったです。
頂には、大きな鉄の剣が突き刺さっていましたが、とてもそこまで行く余裕がなくて
通過してしまいましたが、行ってみれば良かったと後で思いました。

岩ゴロの急坂を下り、這い松の中の道を歩いていると、小さな植物が目に留まります。
一目見た時、これはリンネ草ではないかと思いました。
ずっと以前、尾瀬のお友達のMIURAさんとてばまるさんが、至仏山で見つけた時の
画像を覚えていたからでした。

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小さな小さな苔のような植物で、一本の茎に必ず花を二つづつ付けることから、
夫婦草とも呼ばれていると、家に帰ってきてから調べたら書いてありました。
先を急ぎながらも、足を止め一生懸命撮りました。
そして、さらに下に行くと、大きな群落を作って咲いていましたが、こちらの方は
撮る余裕がありませんでした。


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這い松のグリーンの絨毯の彼方に、とても大きな水面が見えました!
ついに白馬大池が見えたのでした。安曇野さんはどんどん降りて行きますが、
わたしは疲れてしまっていて、足が棒のようになって前にでません。
靴づれも少しできたようで、足も痛みます。わたしは足を引きづるようにして
降りて行きました。

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途中には、素晴らしいチングルマの大群落があります。
山頂では、すでに果穂になっていたのに、ここでは美しく咲き誇っています。
ここは、雪渓が遅くまであるので、花たちの開花が遅れているようです。

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それにしても、見事です。チングルマの次はイワイチョウの群落です。
まだ、花はこれからのようです。そして、その中にピンクのハクサンコザクラが
愛らしく咲いています。

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ほんとうにかわいいです。

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そして、タテヤマリンドウが一面に、咲いていました。

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水色の野の星…タテヤマリンドウを見ると尾瀬を思い出します。

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そして、カキツバタもまだ咲いていました。

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稜線を渡る風は心地よくて、大好きなチシマギキョウや、イワギキョウに感動し
憧れのコマクサの群落に、胸をときめかせながら歩いてきました。

いくつものピークを越え、白馬大池に、やっと辿り着いたのは、12時半を回って
いました。

わたしたちは、ここで昼食をとることにしました。でも、疲れすぎて食欲が湧きません。
白馬大池は、とても美しくて、尾瀬沼にも似ていて、わたしはずっと眺めていました。
もう、ヘトヘトです。もう、ここで、歩きたくないと思いました。
もう一度、「ここで、泊まろう…」と切り出してみましたが、安曇野さんの答えは
ノー!でした。(/_;)

長くなりました。最終章へ続きます。

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白馬岳の朝 

夜半に2度ほど目覚めると、自分が今、2900メートル近い稜線の小屋に
いることを思い出しました。
小屋の明かりはすっかり消えていました。9時ごろ外に出た時は、
まだ小屋の灯りがあったけれど,今頃は、もう、
月と星明りだけの世界でしょう。
3000メートルの夜の色はどんな色をしているのかしら?

夜風はどんな音色を奏でているのかしら?空は深い海のようなのかしら?
星は、さんざめきながら彼方から、瞬く光を降り注いでいるかしら?
夜露はしっとりと花や草に降りて結んでいるのかしら?

雪渓は白く輝いているのかしら?
遠くから聞こえてくる音は、万年雪の滴りでしょうか?

ずっと、想像の世界で思い描いていたことを、実際にこの目で見て、この耳で聞いて、
この頬で感じ、体ごと全部で確かめてみたくなりました。
でも、どうしたことでしょう…体中が痛くて起き上がれないのでした。

これがテント泊なら、入り口から顔を出せば見えるんだろうなと思いました。
這ってでもいいから、外に出てみたい…と、そんなことを考えているうちに、
いつのまにか、また深い眠りの底に落ちていきました。

ずっと憧れてきたのに、白馬岳の夜を感じたかったのに、もったいなかったな…

三度目に周りの気配に目覚めたら、もう早立ちする人たちが起きだして身支度をしています。
わたしたちも3時半に起きて、身支度をし空身で中腹まで上り、ご来光を見ることにしました。

もうすでに東の空は、一条の薄い虹色のベールが、まるで空を流れる川のようにどこまでも
続いていました。

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一面に湧き上がった青灰色の雲海と深い藍色の空に引いた一筋の紅の様でもありました。
空の色は刻々と変化し、透き通るような色合いでだんだんと明るくなっていきます。

深い藍色からコバルトブルーへのグラデーションを見ているよう…
明けゆく天空のドラマは、宇宙の色、人間の言葉なんか陳腐に思える…
わたしは言葉を失くして、ただ見つめていました。

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振り返れば、まだ、黎明の残月が空の高みに昇り、薄明りの中で剣岳は雲海の中に
浮かんだ孤島のように見えました。

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やがて、光の帯の一部が、ゆっくりと輝きを増していき、金色の太陽が昇って行きます。
雲海の彼方に、昇る朝日は本当に神々しく何度見ても日の出のドラマには感動します。

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周りには、どんどんと人が登ってきて、みなさん、感動に顔を輝かせていました。
山座同定に詳しい方が、あれが、富士山、あれが槍ケ岳…そんな風に説明している声を
聞きながら、わたしも目で追いました。

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振り向けば、モルゲンロートに染まる剣岳、そして立山連邦
柔らかなピンク色の雲海に浮かぶ山容は、本当に美しくて何枚も写真を撮りました。

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モルゲンロートに染まる杓子岳から続く白馬鑓ヶ岳、その先には唐松岳
五竜、鹿島槍ヶ岳と続く、北アルプスの遥かな主稜線です。

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手前の丸山の頂の上で、剣の雄姿を眺めている人たちの姿が小さな点になって見えます。
朝日が、その人々の立つ山頂を照らし始めました。
鮮やかなそして暖かなオレンジ色の光が包んでいくようで、幸せな気持ちになりました。

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そして、白馬岳の山頂を目指す人々の列にも神々しい光が照らし始めました。
頂へと続くその道は、まるで金色の道のように見えて、わたしはため息が漏れました。

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真ん中より少し下辺りにいる人の上に見えているのは富士山です。

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山頂小屋と、その向こうの朝の景色です。

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足元の岩場に咲いた花たちは、朝露を含んで健気に咲いています。
やはり、オレンジ色の光の中で、花の色はより深みを増したように見え、
その朝露が七色に輝いていました。わたしはしゃがみこんでシャッターを押しました。

朝露に濡れたチシマギキョウのブルーが目に沁みます。

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こちらはイワギキョウです。チシマギキョウと似ていますが、こちらの花には
白い産毛がないので区別できます。

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タカネシオガマの群落はいたるところに咲き乱れて、その花色が一段と輝きました。

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もう、安曇野さんは下へ降りて行き、早く来いと呼んでます。
わたしは、朝露に濡れた花々を、マクロでゆっくり撮りたかったのですが、後ろ髪を
引かれる想いで、やっと立ち上がり、安曇野さんの後を追いました。

短い夏を謳歌する高嶺の花たちは、朝の光と朝露を体いっぱいに受けて微かに揺れていました。
ああ、この花たちの姿を目に焼き付けておこう。

愛らしいタカネツメクサもキラキラ♫

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そして、チングルマの花穂は、朝露が虹色に輝いていました。

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朝食の時間も順番待ちなので仕方ありませんね。名残惜しくも下山しました。
食堂には長い列が出来ていましたが、小屋のスタッフは手際よく、まめまめしく動いて
上手に誘導してくれます。あまり待つこともなく食事を美味しくいただき満足でした。
山の朝に、こうして暖かいご飯が食べられるって幸せですね(*^_^*)

わたしたちは、身支度していざ出発です。安曇野さんは、頼まれて何人もの方たちの写真を
撮ってあげていました。冗談交じりに、笑顔で軽口をたたいている姿…
そんな無邪気な夫の姿も微笑ましくて、わたしは傍らで見てました。

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すると、安曇野さんは、『すいません。わたしたちのも一枚撮ってください。』と、
青年にカメラを渡していました。二人して白馬山荘の前で写真に納まりました。
夫婦で、苦労して登った白馬岳の朝は、清々しく輝いていました。

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すいません。長くって^_^;あと、2回ぐらいで終わるでしょうか?
よろしかったら、最後まで、お付き合いくださいね(^o^)/

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夕映えの中に 

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高嶺に咲く花々に励まされながら、美しい登山道を登り続けます。
もう、登って行く登山者も途絶えています。
「辛い登りだけど足を止めずに、一歩一歩、足を前に出していけばいつかは着くからね。」
と、安曇野さんを励ましながら、自分にも言い聞かせながら登って行きました。


イブキジャコウソウ

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タカネナデシコ

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ミヤマアキノキリンソウ

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シロウマアサツキ

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オタカラコウ
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ヨツバシオガマ

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ミヤマハンショウヅル(ちょっとボケてますね)

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山々は、そろそろ、夕映えの時間を迎えようとしています。
時々、岩の上でくつろぐ若者たちがいたりします。本を読みながら心静かに、その時を待つ。
素敵な過ごし方をする人たちをしり目に、わたしたちは登り続けました。

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ふと、気づくと、遥か後ろから追いついてきた後続の登山者たちが、すぐそばに迫ってきて
追い越していき、やがて、はるか先を登って行く…
そんなことを何回繰り返したでしょう…

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「焦らなくていいよ。がんばろう。もうじき稜線に出れると思うよ。」
周りに目を移せば、杓子岳の岩峰は、目の高さになっています。
湧き上がる雲海が、微かにピンクに染まっていました。

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反対側の稜線は見渡す限り青空で、なだらかな岩の斜面には無数の特徴ある岩峰が
いくつも見えます。高山の空は果てしなく青く澄み渡っているのでした。

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『面白いな!あの岩は、クマに見える。あれは、ゴリラだ。』と安曇野さん(*^_^*)

クマ岩
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ゴリラ岩
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「うふふ、じゅあ、あれはウサギで、おっちは大トトロね」(^_-)

ウサギ岩
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大トトロ岩
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「ね!大トトロ、ピッタリじゃない~!!我ながらいいネーミングだと思うわ」
そう言って笑いながら、不思議だなぁと思いました。
苦しい登りの中で見つけた遊び心…それも安曇野さんの方から言い出すなんて。
山は人の心をちょっぴり変えてくれるみたいです。
普段なら、そんなこと、決して言わない人でしたから(*^_^*)

すると、先ほどの医学生たちが登ってきました。年配の先生も一緒です。
『あの岩、面白でしょう?象の形に見えませんか?』と先生。
学生たちは『あっ!本当だ!鼻を上に向けて寝ているみたい!』と言っています。

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『そう、あの赤茶色の辺りが耳だね。少し斜めに擦れたような傷があるでしょう。
あれは、氷河が崩れ落ちた時のひっかき傷だと言われています。』と、先生。
『へぇ~!!』学生と一緒に、わたしも、「へぇ~!!おもしろい~!!」でした。

『この岩は、象岩と呼ばれています。岩の名前は、羊背岩(ヨウハイガン)と言うのですがね。』
本当にすごい!だって、本当に像が寝ているように見えるんです。誰が名付けたのか、象岩。
遅れたお蔭で素敵な事を知りました。雄大な白馬の稜線に眠る象を知ることが出来ました。

『そして、あれが、蝋燭岩です。』と、先生が指さしたのは、さっき大トトロ岩と命名した岩でした。
ちょっと角度が違うので、もう、大トトロにはみえませんね。

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岩陰を湧き上がってくるのは、真っ白な夏雲でした。

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お花畑と杓子岳…美しいです。

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まだまだ、お花畑は続きます。

18歳の頃から憧れ続けてきたチシマギキョウについに逢えました。
「わぁ~!!チシマギキョウだ~♪」と、疲れも忘れて舞い上がるわたしに、
安曇野さんもつられて写真を撮っていました。

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岩の隙間に根を下ろして咲く、逞しくて本当に美しい花姿に感激でした…やっと、逢えたんだね。

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そして、ミヤマオダマキの澄み切った青紫の花に、またまた感激でした。

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タカネツメクサ

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そして、5時、やっとのことで、稜線上にある村営山頂小屋に着きました。
ホッとしましたが、わたしたちの宿泊場所は、さらにここから30分以上稜線を登った
ところにある白馬山荘なのでした。

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朝日岳に沈む夕日を眺めながら登って行きます。

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もう、ヘトヘトでここに泊まりたいと思いましたが、安曇野さんはまだ、上に行くと言います。
遅れてきた数組の登山者も、みんなここ泊まりです。
この先に行くのは、もう一組の5人のパーティと、わたしたちの二組だけでした。
そして、当然のことながら、その人たちにも抜かれて、わたしたちは、本当に一番最後の
登山者となってしまいました。

白馬山荘を目指す、安曇野さんの後姿に夕日が照り映えました。
最後の力を振り絞り高みへと向かう姿に、何だかジーンと胸が熱くなりました。

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朝、6時40分に登り始めて、白馬山荘に着いたのが、6時30分。
わたしは、もう、足が限界で、安曇野さんよりもさらに遅れて6時40分の到着でした。
初心者の二人は、なんと12時間かけて登り切ったのでした。

安曇野さんは、宿泊手続きをするやいなや、山岳パトロールの方から、きつく注意を
受けたそうです。山小屋は、遅くとも4時までには着くというのは鉄則ですから、
注意を受けて当然です。今日は、お天気の崩れがなかったからいいようなものですが
もし雷雨とかあったら、遭難の二文字が、頭をよぎります。

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なには、ともあれ、無事に着くことが出来て本当に良かったです。
ちょうど、朝日岳に夕日が沈むところでした。
まるで、わたしたちが着くのを見守ってくれていたかのように、偉大な太陽が沈んでいきます。

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わたしは、ふと、その後光のような光の中に、亡くなった安曇野さんの母と兄がずっと
いてくれたような気がしました。
「お義母さん、お兄さん、見守っていてくれてありがとう。」そう、心の中でつぶやきました。

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夕ご飯を、美味しくいただきました。二人とも何杯お茶を飲んだことでしょう。
笑ってしまうくらい飲みました。本当は飲めないビールで乾杯したかったけれど、
ビールはすでに売り切れでした。

この日、白馬山荘は、今シーズン2回目の満員だったそうです。
それでも、一人一畳分のスペースに寝ることが出来ました。お布団を敷いてあげたら、
安曇野さんは、わたしが洗面を済ませて戻ってくるよりも早く、ぐっすり眠りに就いてました。

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わたしも、眠りたかったけれど、星空が見たくて、外に出ました。
白く霞む天の川、夏の星座が手が届きそうなほど美しく見えました。
小屋の灯りは幻想的で、漆黒の夜空に柔らかなオレンジ色の灯りを投げかけていました。

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そして、小屋の後ろに続く稜線の向こうに、特徴的な白馬岳の頂が見えました。
憧れ続けた白馬岳の懐深く、いま、自分が抱かれているのだと思うと嬉しさに
心が震えてくるのでした。この想いを忘れないように胸に刻もう…

今日の出来事のなにもかも、忘れないように、絶対、忘れないようにしよう…
そんな風に思いながら、わたしは深い眠りに落ちて行ったのでした。

一番綺麗な色って何だろう? 一番光ってる物って何だろう …
ふと、Mr.children の歌が、心の中で何度もリフレインしました。

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お花畑を越えて 2 

猿倉から白馬尻までは、1時間10分、白馬尻から葱平までが、2時間30分
葱平から、村営小屋までが、2時間、頂上直下の白馬山荘まで、30分
通常のコースタイムは6時間10分でした。

<大きな画像:クリックしてどうぞ>
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わたしたちがかけた時間は…
猿倉の出発時間は6時40分、葱平に着いたのが2時30分でした。
約、8時間を費やした事になります。
わたしの考えでは、午後4時には山頂の白馬山荘に着ける予定でしたが、
このペースでは、とても着けそうもありません。

<大きな画像:クリックしてどうぞ>
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午後になって時折ガスが発生していますが、お天気の崩れがなさそうなのが救いでした。
あれほど数珠繋ぎだった登山者も、すでにピークを過ぎたように感じます。
夏山なので日が落ちるまでには着くだろうけど…ちょっと不安が過りました。

そよぐ夏草が草の匂いを運んできました。咲き乱れる花々の姿が緑に染まり、
花から花へと飛び回る蜂たちの羽音、ひらひらと舞う蝶たちのの姿が、
ふっと和やかな気持ちにさせてくれました。

さぁ、元気を出して歩き始めましょうか。わたしたちは、疲れた体を起こし、
立ち上がり、歩き出します。高みへ高みへと…
ゆっくりとした足取りで、そんな風に歩き始めたわたしたちでした。
しばらく行くと岩の上から見下ろしている一人の女性がいました。
『こんにちは』と笑顔で声をかけてくれます。美しい娘さんでした。

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やがて、上から降りてきた青年も笑顔で挨拶してくれました。
安曇野さんが、小屋まで後どのくらいかかるかと聞いていました。
青年は、まだ、3時間はかかりますね。と答えていました。
そろいのユニホームを来ていて、腕にも腕章を巻いているので、山岳パトロール
の方ですか?とお聞きすると、『ぼくたちは、白馬山荘で診療所を開いている
昭和大学の学生です。体調が悪くなった方とか、怪我をされた方の手当などしています。
何か用がありましたら、お気軽に声をかけてください。先生もいらっしゃいますので。』
とのことでした。

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しばらく立ち話をした後、彼らは岩の上に腰を下ろし談笑しながら景色を見つめていました。
3000m近い高山で、こうして登山者の安全を守る仕事をしている若者たちでした。
振り返ると、山々に対峙する彼らの姿が例えようもなく美しく見えました。
山の中では、本当にちっぽけな人間なのに、どうしてこんなに美しいのだろうと思いました。
若さゆえでしょうか…もう、けして若くはないけれど、わたしたちも山の中にいて美しいと見える
岳人になりたいと本気で思ったのでした。

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お花畑は次第に密度を増していきます。
小さい写真では、良くわからないので。少し大きめの写真を使っています。

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イワカガミとアオノツガザクラ

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アオノツガザクラ

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シナノキンバイ

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ハクサンイチゲ

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ミヤマダイコンソウ

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ウルップソウ

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水場

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クロバナロウゲ

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ミヤマキンポウゲ

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このお花は?

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この辺りは、クルマユリとミソガワソウとハクサンフウロがたくさん

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一面のお花畑の中を、必死に登り、必死にカメラを向けました。長くなったので続きます。

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お花畑を越えて1 

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やっと雪渓歩きから解放されたと思いましたが、ここからも結構な急登です。
雪渓から溶け出した水が大きな流れになって岩場を流れていきますので、大岩の上に渡した
木の橋を渡るようになっていますが、一度に大勢乗ると危ないので、一人一人、余裕を持って
通過するようにと、若い山岳パトロールの人が登り口のところで、注意を呼びかけていました。
この炎天下でみんなの安全を見守っていてくれる青年たちが、雪渓の途中にも何人もいました。
みな一様に、日に焼けて逞しく、いい顔をしています。若者たちの頑張りに頭が下がりますね。

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みんな順番で渡って行きます。右端の中ほどを渡って行く人の姿が判るでしょうか?

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川の途中の大岩には“スベル”の文字が赤ペンキで書かれていました。

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こちらは、“落ちるキケン”の文字も

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最初に迎えてくれたのは、ヤマガラシの花でした。

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そして、ミヤマクワガタ

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元気いっぱいのミヤマキンポウゲ

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ハクサンフウロの可憐な花色に癒されます。

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見上げると、岩峰の奥から、緑色の子猫が覗いています。二つの突起が耳に見えませんか?(笑)

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相変わらず、荷物は重く足をやっと前に出して登っています。
お昼はとっくに過ぎていますが、疲れ切っていて食欲がわきません。
でも、何か口にしないとバテてしまうので、この辺りで休憩を取ることにしました。

重い荷を下ろしホッと一息…休んでいると、ひたひたとガスが登ってきては消えてゆきます。

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ミヤマカラマツソウ、初めて見ましたが、とっても綺麗でした。

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ミヤマセンキュウのレースのような花が繊細です。

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この辺りから、クルマユリのオレンジ色の花がたくさん咲いていました。

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この花を見ると、晩夏の尾瀬を彩る、コオニユリを思い出して懐かしくなります。

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オニシモツケも群生してます。

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高山蝶のクモマベニヒカゲが見れました。
他にもクジャクチョウもいたのですが撮れませんでした。

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ハンゴンソウかしら?

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ヤマブキショウマも多いです。

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ハクサンボウフウ

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テガタチドリ

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すると、休んでいるわたしたちの目の前を年配の女性が登って行きます。
大きなザックを背負い単独行のようです。足取りはゆっくりですがマイペースで
しっかりした足取りで登って行かれます。

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ゆっくりと、でも着実に…山慣れたベテランの登山家なのでしょう。素晴らしいです。

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ハクサンフウロ咲く道

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イワオウギ

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タカネニガナ

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イワシモツケ

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ウサギギク

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やっと、葱平に着きました。ここまででも、お花はたくさん咲いていましたが、
ここからは、もっと密度が濃くなります。
白馬特有の花、シロウマアサツキに逢えました。

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とんがりの蕾の感じが面白いですね。そして薄紫の花色が素敵です。

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葱平(ねぶかっぴら)と読むようです。

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白馬大雪渓に挑む 

いよいよ、白馬尻に着きました。ここから大雪渓を登ります。
白馬の大雪渓は日本三大雪渓の一つです。
たくさんの登山者たちは、岩場でアイゼンを装着し、続々と登って行きます。

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わたしたちも、アイゼンを装着して、出発です。
奥に見えるのが白馬岳です。小さな点に見えるのは登山者たち、
延々と、雪渓の中央を一列に登って行きます。

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抜けるような青空に白い雪が映えて眩しいです。
雪渓の上は、ひんやりとして涼しく、真夏なのに冷蔵庫の中にいるようです。

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振り返れば、後ろにも登山者たちの列が続いています。
雪渓は大勢が歩くため、緩んでいて歩きづらく、一歩一歩踏みしめないと滑ります。

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どこまでも、どこまでも、急斜面を登って行きます。
主人もわたしも、初心者なので、少しづつ遅れて、だんだんと前が空いてきます。
後ろの人に追いつかれると、「どうぞ、お先に…」と追い越してもらいます。

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雪渓の上には、かれこれ大きな岩がたくさん転がってます。
これは、全部落石なのだとか…そう聞くと怖いけれど、一気に落ちた訳ではなく
雪渓の中央を歩いている分には、よほど運が悪くない限り、落石にあたることはなさそうです。
注意をすることは必要だけれど、極度に恐れることは無いようにおもいました。

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それよりも、わたしたちは、肩に食い込む重い荷物に悩まされ始めていました。
安曇野さんも、数歩登っては休みを繰り返しています。
「あなた大丈夫?」 『ああ、お前は大丈夫か?』
そんなふうに、お互いを気遣い、励ましあいながらアリのごとく登って行きます。

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果てしなく続くように思われる雪の斜面は遅々として進みませんが、それでも
はるか上に見えていた天狗菱の岩峰が気が付けば近くになっていました。

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時折立ち止まり、喉の渇きを癒しながら、また、重い足を引きずるように、
前へ前へと進みます。それは、とても辛い作業でした。
お互いに口数は減り黙々と進みます。いいえ、進もうとするのですが、
その歩みは亀のごとくです。

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上部に行くと同時に、時折、白いガスが湧き上がり、どんどん雪渓を這い上がり
一面、真っ白に包んでしまったりすることもあります。

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けれども、天候が変わるということはなく、また、すぐにガスが消えるので
心配はいりませんでした。高山の気象って実に変化がありますね。

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やっと小雪渓に入り、白馬岳の頂に少し近づいてきました。

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ここで、アイゼンを外します。わたしたちがアイゼンを外しているとき、
ガラガラガラっと大きな音を立てながら人の頭ほどの岩が落ちて行きます。
すぐさま、近くの人が『落石~!!』と叫びました。
斜面上にいる人の列からは、離れた斜面を、岩はかなりのスピードで転げ落ちて行きました。

斜面を登っていた人たちは唖然として落石を眺めていました。
もし、あの岩が人の列に落ちてきたとしても避けられないなぁ…と思いました。

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雪渓の上部は、半端なく青い空と、柔らかな湧き上がったばかりの真綿の雲…
ああ、なんて綺麗なんだろう。今、自分がここにいることが信じられない気持ちでした。

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雪渓の淵には、クレパスが大きな口を開けていました。
安曇野さんもかなり疲労しています。ここまで、よく頑張りました。

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ここからは、岩場を登って行きます。雪渓よりは歩きやすいけれど、
相変わらずの急登です。でも、ここからは、お花畑が始まるはずです。

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北アルプスデビューの朝 

その朝、仮眠を取った駐車場で目覚めました。
まだ、空には、星と月とがまどろんでます。

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洗面を済まし、身支度を整え白馬駅へと向かいます。
途中の交差点で、朝靄の中にモルゲンロートに染まる北アルプスの峰々が目に入りました。
「いよいよなのね!あの懐へと飛び込んでいくのね!」
晴天です!昨日まで、まだ、いくらかの不安を抱えていた胸が、
清々しく、今日は一気に晴れていくのを感じました。

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「よーし、登るぞ~!」不思議なことにふつふつと闘志が湧き上がってきました。
まるで、ピークハンターだった二十歳の頃のわたしのように、高揚する想いで
胸が、いっぱいになりました。
登山口の“猿倉荘”に到着です。「ああ、これが、猿倉荘なのね!!」

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猿倉荘の前にはすでに登山者がたくさんいて、思い思いに準備が始まっています。
わたしたちも、山岳パトロールの人に登山届を提出し注意事項を受けました。
『大雪渓では、常に落石があることを念頭に置き、特に雪渓の上部では
前方に注意を払ってください。落石を見つけたら大きな声で知らせてください。』
ちょっと、身の引き締まる思いです。

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登り始めてすぐに、鑓温泉への分岐が現れました。白馬~杓子~白馬鑓ケ岳
白馬三山を縦走したら。ここに降りてくるのね…と心の中でつぶやきました。

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森を抜けると眩しい青空と雄大な北アの山塊が迎えてくれました。
申し分ないお天気です。昨夜からわたしたちの白馬行を応援してくれる、
たくさんの友人たちから、激励のメールが届いています。
とても、とても、ありがたい事です。今、この時も想いを馳せていてくれている
方たちがいるのです。
わたしは、みんなに、行ってきます~!!と叫びたい気分でした。

古い山友達のmasaさんとりーちゃんは、『しーちゃんの、夢が叶うんだね。
何だか自分の事のように嬉しいよ。憧れの北アルプスを胸に刻んできて!!』
と、メールをくれました。うん!!行ってくるよ!!見ててね!!

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さすが、北アルプス屈指の人気の山ですね。もう、ここからすでに登山者は
絶えることがありません。いくつかの沢を渡りかえして行きます。

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朝の光がキラキラしている澄んだ流れです。手を浸したいなぁなんて思ったり…

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あの奥に見える白い峰が白馬だと、誰かが言っていました。

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林道脇には、すでにいろいろな花が姿を見せてくれます。

エゾアジサイ(ピンク)

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エゾアジサイ(水色)

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ヤマホタルブクロ(白花)

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オニシモツケ(オニが付いているけど、綺麗です)

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ミヤマウィキョウ

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ミヤマシシウド

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クガイソウ

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ソバナ(早くも晩夏の花です)

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カニコウモリ(蕾の淡い紫色が好きなはなです)

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ズタヤクシ(とっても小さいお花です)

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オオレイジンソウ

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タマガワホトトギス

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ツルアジサイ

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わぁ~!!ゼフィルス、見つけちゃった。
少し、翅は傷んでいたけれど、メタリックブルーが美しいジョウザンミドリシジミ
ゼフィルスとは、ラテン語で“西風”と言う意味。
キラキラと煌めく翅を持つ美しい蝶なのです。山地性の蝶で木の葉の上を飛ぶので
あまり姿を見かけることが少ない蝶なんです。逢えて嬉しいな。

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ヨツバヒヨドリもたくさんあるので、アサギマダラも目にしました。

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サンカヨウはもう、青い実に

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こちらは、蛾です。ヒトツメオオシロヒメシャク
蛾は嫌いな方も多いと思います。わたしも大きなのはちょっと苦手…
でも、このくらいのは、平気です。薄暗い森の中でひらひら飛んでいるのも
なんとなく、哀愁感じちゃったりします。

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オタカラコウ

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ミソガワソウ(今回初めて見ました)

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ホソバヤマハハコ

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カラマツソウとカツラの葉

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キヌガサソウ
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林床の花々を愛でているうちに森林限界までやってきました。
そろそろ白馬尻です。

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夢が叶う時 

18歳のわたしが憧れていたのは、白馬岳登頂…
山が好きで、数々の山の本を読みあさっていたあの頃、北アルプスの峰々は
わたしの憧れでした。
そして高嶺に咲く花々を本で眺めながら、その名前を覚えたものでした。

なかでも串田孫一さんのエッセイが好きでした。
山旅を終えて帰宅し、登山靴の整備をしながら、その靴に出来た新しい傷を
見付けた時、それが勲章のように思えて愛おしかったとか、
山靴の間に挟まって、山から持ち帰ってしまった小石を一抹の哀愁を持って
眺めたりする感性とか、

山に登りながら、咲き誇るたくさんの高山植物に癒され、そして心の中で
話しかける。ところが、名前がどうしても思い出せない花がある。
顔は見たことがあり、どこかで会った記憶があるが、どうしても名前を
思い出せない人がいる。
人の名前なら、挨拶をして少し会話を交わすうちに思い出すこともあるが、
花は口をきかない。花の名前を忘れると、花に申し訳ないと思うと同時に、
その花に見捨てられたような気持ちになって哀しくなってしまうとか。

お気に入りの書物の間に、茶色くなった枯葉の栞を見付けた時、
ああ、これは、どこどこの山に登った時のものだと、一瞬にして
その時の山行へと時間を飛び越えて行けるとか…

短編のエッセイの中に綴られた繊細な感性に惹かれたものでした。
今でも、その時に感じた想いに影響されているようなところがある気がします。
山に行って。落ち葉を拾って、本の栞にするあたり…影響されてます(*^_^*)

話がそれましたが、あの頃、いつか北アルプスに登りたい…そう思って
わざと重い荷を背負って奥武蔵や秩父の山々を毎週のように登っていましたが、
こんなトレーニングで本当に登れるのだろうかと不安になることもしばしばでした。

そんなわたしでしたが、今までに2回白馬岳に誘われたことがありました。
一度は職場の先輩で、残雪の尾瀬に連れて行ってくれたM子さんでした。
『○○ちゃん、一緒に北アルプスに行かない?』
「え~!北アルプスですか~?行けるかなぁ?」と、わたし。
まだ、その頃は、軽登山靴とザックを持っているだけで、他には何も
装備を持っていないわたしでした。

『大丈夫行けるわよ。白馬岳は花の山。北アでは初心者の登る山よ。』
M子さんは、一人で厳冬期の雲取山に登ってしまうようなタフで頼もしい
女性でした。迷った挙句わたしには彼女に付いて行く自信がなくて、
この山行は、お断りしてしまいました。

山から帰ってきたM子さんから、美しい高山植物の写真や雷鳥のヒナの写真
雄大な北アの山々の写真を見せてもらい、行かなかった白馬岳への憧れが
ふつふつと湧いてきたのでした。

そして、その翌年、職場の山岳部の新入部員だったわたしは、思い切って
夏山合宿に参加する決心をしました。その行き先は白馬岳だったのです。
けれど、合宿の日が近づくにつれ、台風が近づいてきました。
前々日まで行くつもりで、真っ赤なアタックザックに、荷物を詰め込み
出かける準備は万端でしたが、
『こんな台風が来ているのに、危ないから出かけないでほしい。』という、
心配性の母のたっての願いで、諦めざるを得ませんでした。

山岳部の部長は、『台風は通過するはず、もし、天候が悪かったら、
下の宿で回復するのを待つから大丈夫だよ。行くだけでも行ったら?』
と進めてくれたのですが、親に要らぬ心配を、かけたくなかったので
行くのを諦めました。
それでも、内心、諦め切れなくて、炊き立てのおにぎりをたくさん作って、
夜行列車で出かける先輩たちを見送りに、夜の新宿駅まで駆けつけたのでした。

『なんだ、来ればいいのに。』『もう、雨は上がるぞ。』色とりどりの大きな
ザックを背負い、ひとりひとり手を振って旅立って行く仲間を見送っていたら、
何だか心だけ一緒に旅立ったような気持ちになりました。

そして、一人、帰りの電車に揺られながら、「これで良かったんだ」と、
自分に言い聞かせました。
やはり、北アルプスは、わたしにはまだ無理だったんだ。
もう少し山の経験を積んでから、次回こそ挑戦しよう!と心に決めたのでした。

けれど、その後、結婚し、出産や育児に追われ、北アルプスどころか
山からも遠ざかってしまったのでした。

主人は信州の出身でした。主人との結婚を決めたのも、憧れの白馬岳に
近い村の出身ということも一つの理由でした^_^;
この人と結婚すれば、いつか一度ぐらいは白馬岳に登れるかも知れない。
そんな下心があったのは否めません(笑)

ところが、主人は山は登るものじゃないという信念の持ち主だったので、
結婚してこのかた北アルプスどころか、一緒に山を歩くことは一度も
ありませんでした。

でも、ここ1年ほど前から、徐々に近くの山を一緒に歩くようになりました。
そんな主人が唐突に、『白馬に登る』と言い出しました。
主人の幼馴染が、白馬村に住んでいるので、そのツテで、白馬山荘も予約
できると言い、さっさと宿も手配しました。

コースは大雪渓を登り、栂池に下るコースです。
あっというまに、8月4日~5日で日程が決まりました。
長年、憧れ続けてきた北アルプス、白馬岳が、こんなにあっけなく行ける
ことになるなんて思いもしませんでした。

夢が叶う時って、こんなものなのでしょうか?何だか実感が湧きません。
それどころか、大雪渓を登って行ってこれるのか、無事帰ってこれるのか
不安すら覚えます。
数年前ならいざ知らず、最近は山らしい山に登っていませんし、主人も
ほとんど山の経験はありません。

主人に言うと『大丈夫だ、子どもの時に登ったことがある!!』と言います、
「え~!?子どもの時ですか~?それから、何年経ってるの?」^_^;
いつものわたしらしくありませんが、何だか不安です~~~(>_<)

でも、せっかく主人が行こうといってくれている時、千載一遇のチャンスですね。
なぜ、白馬に決めたの?と主人に聞いてみたら
『お前が、白馬に登りたいと言っていたからだ…』と言いました。
そうだったの…ありがとう。

三度目のチャンスが巡ってきた白馬岳、今度こそ、夢が実現することを願って。
夢を手繰り寄せるのは自分の強い意志以外何もないことを心に言い聞かせました。

明日の午後、白馬村を目指して出発します。
遥かな山旅になると思いますが、夢を心に描いて行ってきます。
すべての出来事を、心に刻んで来ますね。
まずは、行っておいでと背中を押してくれたお友達のみなさん、
行ってきますね。無事に帰って来ますので、待っていてくださいね(*^_^*)

帰りは6日になると思います。しばらく留守になりますm(__)m

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そうそう、今度の山旅のために新しい山靴も購入しました。
北アルプスでもガンガン登れる頼もしい靴にバージョンアップです。
「でも、高いなぁ…」と思っていたら、主人が10000円、ポンと出してくれました。
ふっとっぱら~!!(笑)

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奈良 まほろばの道 序章 

スピリチアルコースとは?

予定通り、奈良駅のホームで待っていると、二両編成のかわいい列車が入ってきます。
「わぁ~!!かわいい~!!」ローカル線テツコのわたしは、パシャパシャ撮っては
大はしゃぎ、オマケにアイリスにまほろば線とのツーショットを撮ってもらう始末です ^m^

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列車が走り出すと、車窓に広がるのは、どこまでも続く田園風景
どこか懐かしげな木造の駅舎、
「ああ、いいじゃない!!このまま、どこまでも行ってみたい。」と、
わたしは車窓に、釘付けでした。すると、見覚えがある景色。

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「あれ?アイリス、ここ、この前歩いた所だよ。」と言うと、アイリスも
『本当だ、バスに乗り遅れて、次が1時間も待つようだから、歩いちゃえ!
って歩いた道ね。』
「そうそう、でも、そう甘くはなくて、40分ぐらい歩いて途中で諦めて
バスを待ったのよね。」
『うん、ああいう、馬鹿なことする親子って、他にはいないだろうね、きっと。』
田んぼの中を流れる川に沿って続く川べりの道を、てくてく歩いている二人の姿が
浮かんで、思わず笑いあってしまいました。

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次に目に付いたのは、昔懐かしい運賃表。横軸と縦軸に駅名が書かれていて、
そこまでの運賃が一目で分かるようになっています。
駅名がたくさん並んでいます。途中、紀伊線に乗り継ぐみたいです。
そして、最後の駅名を見たとたん、びっくりして二人同時に声にだしました。
『ねぇ、終点の和歌山って、あの和歌山かしら?』
「うん、紀伊線って書いてあるから、たぶん…。ということはこの列車は和歌山まで行くの?」
わたしの中で、地理が分からなくなってきました。
「和歌山って海の近くよね?四国にあるんじゃなかったけ?」
『そうだったかなぁ?でも、四国までいくはずないよね~?じゃ、違う和歌山???』
と、こんな具合です。関西方面に、まるで明るくない母娘でした~(笑)

このまま、列車の旅をして、終着駅まで行ってみたいという衝動に駆られ
ましたけれど、思いとどまって、当初の目的地の天理駅で降りたのでした。

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昨日までの曇り空とうって変わり、今日は上々のお天気で、真っ青な空が広がり
気温がどんどん上昇しています。一昨日までの週間予報では曇り時々雨、
降水率は50%だったのに、さすが、晴れ女の二人です。
それにしても暑くて一気に夏です。梅雨は明けたのでしょうか?

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用意しておいた日傘をさして出発です。
アイリスは地図を開いて導いてくれます。
しばらく町の中を歩いていると、右手になにやら大きな建物が見えます。
千と千尋の神隠しに出てくる“湯屋”のような佇まいの建物…
しかも建物の中央に巨大な煙突のようなものが立っています。

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「あの建物はいったい何かしらね?すごく立派ね。見に行ってみようか?」
『そうだね。この通りの突き当りを右に行けば良さそうだね。』
ところが、突き当たりまで行って、びっくり。
なんと右にあると思っていた建物が、左側にあるのです。
「おかしいなぁ??いつの間に、右に回り込んだのかしら??」
二人とも狐につままれたような気持ちで、その建物を見上げました。
いくつもの窓がありながら、人の気配はまったく在りません。
煙突のように見えていたのは、巨大なコンクリートの円柱でした。
「煙突じゃないんだ…いったい、何に使うんだろうね?」
そう言いながら、その建物を過ぎてしばらく歩いた時、アイリスが叫びました。

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『おかあさん、見て!!向こうにも同じ建物がある!!
さっき見ていたのはあっちの建物だわ!』
「本当だ!!確かに、方向もあってるね。同じ建物が二つ?何の建物なんだろうね。」
ところが、さらに歩くうちに、もっと驚くことになるのでした。
それは、まったく同じ作りの建物が、あっちにも、こっちにも、たくさんあるのです。

巨大な煙突状の円柱も同じです。そして、どの建物も立派なのですが、
一様に無機質な感じがするのです。遠目には、木造の古い建物と見えましたが、
よく見ると、鉄筋コンクリート造りのようで、そこまで古いものでもなさそうです。

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いったい、この建物は何なのでしょう???不思議過ぎます。
暑いので、しばらくアーケード街を歩くことにしました。
まだ、時間は9時を回ったところで、ほとんどの商店がシャッターを
開け始めたばかりでした。徐々に歩く人の数が増えてきたと思ったら、
あることに気がつきました。黒いはっぴを着た人の姿が目立ちます。
というか、半数以上の人が着ているといっても過言ではありません。

そのはっぴの背中には、“天〇”の文字が染め抜かれています。
ここでやっと、わたしたちは、この町が天〇教の宗教都市なのでは
ないかと気づいたのでした。

そして、案内板を見て、あの建物の謎が解けました。その案内板には、
いたるところに、天〇の文字が着いた学校や病院が書かれていました。
“天〇中学校” “天〇高学校” “天〇小学校”“天〇幼稚園”
う~ん、いっぱいあります。
それにしてもあの建物が幼稚園や小学校とは…
“天〇よろず相談病院”聞きなれない名前ですが、その数もたくさん
あります。よろず相談病院って、いったい… 
「怪しい…」二人で顔を見合わせてしまいました。
あの建物は、学校だったり病院だったりするようです。

世の中にはいろんな場所があるものですね。
他所から来た旅人のわたしたちには計り知れないことでしたが、
確かにこの街は存在しているのです。

『判ったわ、ガイドブックに書いてあるスピリチアルコースって、
このことだったのね。』と、アイリスが声を潜めて言いました。
「なるほど~!そういう事なのかもしれないね…。
なんだか、千と千尋の世界を歩いているような気がするよね。」

しばらくいくと、ものすごく巨大なお寺のような建物に行き当たりました。
ここが天〇教の総本山のようです。
人々は、その中へと吸い込まれるように入っていきました。

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『ココを歩いている人が、みんな、狸や狐だったら、どうする?』
アイリスが笑いながら、でも、ちょっとビクビクしながら言いました。
うん、うん、分かる気がします。。。
宗教を否定するわけではないのですが、その建物の並外れた大きさに
何も知らずに初めてこの場所を訪れた旅人は、わたしたちのように
圧倒されてしまうのではないかと思います。

アーケード街の中は、懐かしげなお店がたくさんありました。
まるで、昭和にタイムスリップしたかのような佇まいです。
このおもちゃ屋さん、わたしが子供の頃に逢ったようなお店です。
店の中の狭い通路を巡りながら、所狭しと並んでいるおもちゃを
あれこれ探しながら見たものでした。

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こちらはプラモデルやさん。弟が大好きだったっけ。

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下駄屋さん、こういうおばちゃんが、店番していましたっけ!

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何だか昔懐かしい路地も

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やがて、町全体が見渡せる小高い丘に着きました。ここから見下ろすと、
丘の上には長閑な田畑が広がっていて、空が大きく広いです。
白い雲を浮かべた夏空が、どこまでも広がっているのでした。
桜並木が続いていて、その先に、“山の辺の道”の道しるべがあり、
緑深い山際の小道が続いていました。

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ようやく、始まりに辿り着いたようです。それにしても、長い序章でしたね。
すみませんでした(~_~;)
次は、まほろばの道 1に、続きます。


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