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風立ちぬ

日々の想いを風に乗せて…

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真冬の滝 

2月4日

毎日、毎日、氷点下の朝。それに、数日前には雪も降った。
きっと、今年こそは百尋の滝の完全凍結が見れるに違いない。
毎年、この時期に訪れているが、まだ、完全凍結に出逢ったことがないのだった。

わたしは、この滝が好きだった。もう一つのお気に入りはカロー大滝だが、
こちらの滝は、まだ厳冬期に訪れたことが無かった。
どちらにしようかと迷ったが、カロー大滝のある小川谷林道は依然として
通行止めのままだと聞き、やはり百尋の滝に決めたのだった。

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安曇野さんとお友達のshinさんを誘い、三人で行くことになった。
街中の雪は消えているが、日原街道に差し掛かるとたくさんの雪が残っていた。
そして、川苔谷に続く林道は、カチンコチンに凍りついた個所があった。
わたしは、油断していて滑って頭を強打してしまった。

あいにくザックを下ろしていたので、空身でもろに頭を打った。
目から火花とは良く言ったもの、頭の中がカキィーンという音がして、
目の前が真っ白になった。

しょっぱなからドジってしまって先が思いやられるとしょげたのだが、
頭も痛くなく大丈夫そうなので、山行は続けることにした。
考えてみたら、『この先の道は、もっと大変だから気を付けろよ』と、
山が教えてくれたのかも知れない。と、そう思ったら何だか気が楽になった。
どれだけポジティブな思考回路なのかと自分でも呆れながら雪道を登り始めた。

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雪はそう深くないものの、アイスバーンになった箇所が何か所もあり
わたしは、滑ってばかりなので早々にアイゼンを装着することにした。
この渓谷は、片側が切れ落ちた渓谷になっているので、足を滑らすと
大変な事になりそうな箇所がいくつかあったし、渓谷を渡る木橋も
高架な上に、氷でツルツル滑ってちょっと怖かった。

キーンと張りつめた朝の空気は清々しく、山肌が朝陽でオレンジ色に
染まり行く様は美しかった。
やがて、深い谷にも陽射しが届くと、インクをこぼしたように、
雪の谷間を流れていた深い藍色の川が、オレンジ色に輝いた。
その川面は波一つなく、まるで鏡面のように凪いでいた。

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川岸には、カツラの老樹が佇み、古りし幹は黒々と白い雪に映えていた。
なんて静寂な景色なのだろう。
時折り、枝先を渡りゆくエナガの群れの囀りと、絶え間ない川音だけが
流れてくる。あとは、わたしたちが踏みしめる足音だけだ。

流れの岸辺に発達した純白の飛沫氷や、岩肌を流れ落ちた湧水が
創り出した透明な氷柱たちが、美しい氷の世界を見せてくれた。
わたしは、この氷の世界を見れただけでも満足だった。
時々、立ち止まってはカメラを向けながら登り続けた。

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いったん、川を離れ、杉林の山道を登りあげ、また川にでる。
この杉木立の中に、モミの巨木が立っている。
雪の小道とモミの樹皮に木漏れ日がまだらな光と影を作った。
大小様々な岩が累積している川を渡り、今度は岩の道を登りあげる。
その登り口にある湧水は、いつも枯れることなくこんこんと
湧きだしているのだが、凍っていなくて不思議だった。

大岩の角を曲がれば百尋の滝が視野に飛び込んでくる。
そして、この瞬間、いつもと違うと五感で感じた。
大岩が見え始めた頃から、いつもなら轟々とした滝音が聞こえて
くるのだが、今日は何も聞こえてこない。
岩角を回りこみ、氷りついた滝を目にした途端、わたしたちは
思わず声をあげた。

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青空に聳え立つような岩壁の中央に、青白い氷塊が圧倒的な
存在感で君臨していた。
いつものような轟音は、氷の中に閉じ込められたかのように
かき消され、不思議なほどの静寂の世界だった。
流れの一筋一筋が、そのまま凍りついたかのような巨大な
飛沫氷の造形は、氷の女王の宮殿のようだと思った。

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滝壺も、美しいブルーのしじまに氷りついていて、滝の真下まで
歩いていくことが出来た。
真下から氷漠を見上げると、その美しさに圧倒されて言葉も出ない。
わたしたちは、無言のまま写真を撮り続けたのだった。
良く見ると、小さな亀裂が滝の上部に生じていて、そこからは
細かな霧のようになって水煙が上がっているのだった。

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そして、よく耳を澄ましてみると、氷の中を流れ続ける滝の音が
ポコポコと微かな音で聞こえてきた。
「あ~!春の音だ!春の音が聞こえる。」わたしは、ずっと以前
残雪の尾瀬沼で聴いた音と同じだと思った。
こんなに完全に凍結した滝なのに、季節は巡ろうとしている。
そう感じた瞬間、「ああ、来て良かった…」と思えたのだった。

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きっと完全凍結が見られたのは今日が最後だろうと思った。
午後の陽ざしに、滝壺の氷の下を、黒い気泡のような水が絶え間なく
流れていたからだった。
わたしたちは、名残りを惜しみながら氷漠を後にした。

帰り路、長滝の反対側の山肌が、おびただしい氷柱に覆われていて
そこに日差しが当たり、まるで燃えているようだった。
いつもは降りられない斜面も、深い雪のお陰で降りられる。
わたしたちは膝まで雪に潜りながら斜面を下りていった。

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長滝の落ち口から滝壺を眺めることが出来た。
そして、いつも気になっていた、渓畔樹のサワグルミの根元に
立つことが出来た。わたしは、その巨木の幹に手を当てた。
思っていた以上の素晴らしい株立ちの巨木だった。
根元のすぐ下を流れる川と滝とのコラボも素晴らしかった。


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帰りには、気温も少し上り、ところどころで氷柱の欠片を見つけた。
わたしは、その欠片を拾い上げた。
一点の曇りも、不純物もない透明に透き通った氷の欠片…
そっと太陽に透かせると、キラキラと輝きを放った。
綺麗!!と呟いた時、「どこかで、春が生まれてる…」
そう、感じたのだった。

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わずかな陽射しに温もりながら、カツラの老樹がせせらぎの音を聞いていた。
冬木立たちもまた、季節が移ろうことを知っているのだと思えた。
同行してくださったshinさん、安曇野さん、素敵な山旅をありがとう。

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この山旅をデジブックにまとめて見ました。
よろしければ、下のURLから、ご覧ください。


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category: 森・山

CM: 2 TB: 0   

Love Ice 

高い山に登らなくても、
遠くの山に行かなくても、
素敵な冬の楽しみ方がある。

何気ない小さな森の、小さな渓へと、
わたしは、足を踏み入れる。

すると、そこは、白い雪が降り積もった世界。
雪の谷を流れる、一筋の藍色の川面を、
朝の日差しがオレンジ色に染めて行く。

渓谷へと降り立てば、緩やかな流れの淵に、
小さな落差を流れる渓流に、
美しい氷の造形が現れる。

朝の光を反射してキラキラと輝いたり、
まるで、透き通った内部に、その光を閉じ込めたかのように
不思議な色に染まったり、

繊細な氷柱だったり、なめらかな薄氷りだったり、
丸みを帯びた、たくさんの氷塊であったり、

自然が創り上げた、さまざまな造形に
わたしは、夢中になるのだった。

冬の渓谷で出逢う、ひそやかな氷りたちを
わたしは、愛して止まない。
Love Ice と、呼んで、今年も逢いに来た。

不純物がまったく無い
水と凍てつく空気と透明な夜が創りあげ、
澄み切った荘厳な朝の光が命を与えた

美しい氷の渓谷に向き合っていると
心の音が聴こえる気がする。



凛とした冬の空気が、磨き上げたLove Ice を、
デジブックにしましたので、良かったらご覧ください。




category: 森・山

CM: 6 TB: 0   

尾ノ内の氷柱 

この所、冷たい氷の世界ばかりのブログですが、
もうしばらくお付き合いくださいね。
画像は冷たいですが、中身はあったかなブログにしたいです。

三十槌の氷柱を見た後、もう一ヶ所の氷柱の名所、尾ノ内渓谷へと向かいました。
尾ノ内渓谷は、小鹿野の外れにあり、群馬県へと通じる道路沿いにあります。
とても長閑な山村風景が広がり、わたしにとっては、氷よりも
この里山を散策してみたいという気持ちが湧きました。

普段は、本当に静かであろう里山に、今日は車の長蛇の列が出来ていました。

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NPOの人たちや、地元の消防団の方々、自治会の方々、多くの方たちが
ボランティアで、交通整理や車の誘導など、まめまめしく働いていました。
この氷柱は、渓谷の水をくみ上げ、ホースに細かい穴を開け、噴霧して
人工的に氷柱を作っているのだそうです。
町興しの一環として、始められた氷柱作りですが、先日、テレビの番組で
取りあげられてから、どっと人が押し寄せ渋滞が起きるほどになってしまったそうです。

『こんなに人が集まって、僕らもびっくりしているんです。』
地元の消防団で借りだされたという若者は、寒い中無償で交通整理にあたっていました。
『お待たせして、申し訳ありません。』と、みなさん、車に寄って来ては
声をかけてくださいました。
駐車料金も入場料もなく、観光客を受け入れてくれ、甘酒などもふるまってくれます。

なんとも優しい地元の人たちのお陰で、1時間半近く駐車場に入れるのに
待ちましたが、苦にはなりませんでした。
3時半頃になって、ようやく氷柱のある渓谷に辿り着きました。
二子山の険しい岩峰がそそり立っていました。

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こちらは、両神山の険しい鋸歯のような山容がすぐ近くに見渡せます。
ここから登る登山道は上級者向けの険しいコースのようです。

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森の中にシャクナゲがたくさん植えられた斜面がありましたが、
ここにはクリンソウも群落で咲くのだそうです。
地元の人たちが10数年前に、長野から取り寄せたタネをまいて育てたのだそうです。

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やがて行く手に、素晴らしい氷の谷が見え始めました。

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渓谷全体を埋め尽くすほどの見事な景観に唖然としました。

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人工的と言っても、ただ水をかけるだけでは、ダメなのだそうです。

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少しづつ、絶え間なくかけていなければなりません。

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いろいろ試行錯誤して、やっとここまで凍る様になったそうです。

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薄青い光を放つ美しい氷柱の渓谷は、人々の努力の結晶なのでした。
大自然が創り出す繊細な三十槌の氷柱とは、また、趣が違うけれど
人と自然がコラボして創り上げた、尾ノ内渓谷の氷柱もまた、自然の造形です。
スケールの大きな氷の世界を素晴らしいと思いました。

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ちょうど、夕映えの光が山々を越えて谷にもわずかに光を投げ込みました。

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『昨日は、ライトアップしたんだよ。』と、小さな男の子が話しかけて来ました。
「僕は、地元の子なの?」と聞くと、『うん』と、頷きます。
「そう、いいなぁ、きれいだったでしょう?」と、聞くと、
『うん、凄くきれいだったよ。』と言って、少年は嬉しそうに顔を輝かせました。

こんな小さな子どもたちの心に、綺麗な灯を点すことが出来て、きっと、
大人たちの努力は報われたのではないかと思いました。
自分の住んでいる町を誇れること。そして、好きになること。
それが町興しの原点なのではないかと思います。

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帰り路、コーヒーを売っている出店に立ち寄りました。
そこで、地元の若者とそのお母さんとお話ししました。
『わたしたちは、Uターン組です。都会で長いこと暮らしてましたけど
やっぱり住むにはここがいいわね。故郷が一番です。』
そんなふうに話していたお母さんの笑顔が印象的でした。
若者も、妻や子供ともに、この町に馴染んでいるようでした。

秩父地方の言葉で、冷たいということを「ひゃっけぇ」と言うそうです。
冷っけぇ氷柱の里は、暖っかい人情の里でした。
わたしたちは、クリンソウの咲く頃、また、訪れたいねと話しながら
暖かい心持で、尾ノ内渓谷を後にしました。

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category: 森・山

CM: 8 TB: 0   

冬の風物詩 

この所、ずっと、北極圏からのマイナス寒気団に日本列島は
すぽりと覆われぱなしのようです。
1月24日、関東地方にも雪が降りました。
翌朝には止んだ雪、透明感のある凛とした空気感と、澄み渡る冬の空
雪を被った奥多摩の山並みを眺めながら、ちょっとワクワクした気持で
職場へと向かいます。

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でも、雪に慣れていない地方のこと、カチカチに凍りついた路上は滑ります。
車はガリガリと音を立ててゆっくりと走り抜け、自転車の人の危なっかしいこと。
歩いている人も、結構転倒している人もいました。

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桜草の小さな蕾の、咲き残った菊の花も凍えているようでした。

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その後も、ずっと、氷点下の日々が続いていますので、奥秩父に氷柱を見に出かけました。
三十槌の氷柱は、天然の岩清水が浸み出して、時間をかけて凍ります。
細く尖った氷柱が幾重にも重なり、さらに成長を続け、見事な氷柱の壁を創ります。

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暖かくなれば、あっけなく溶けてしまう、儚い冬の風物詩
人智の及ばないところで創り上げられる、こんなにも美しい神秘の造形
降り注ぐ光を閉じ込めたように輝く氷柱を見たくて人々は集まってくるのですね。
大勢の方が、楽しまれていました。

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デジブックにまとめて見ましたので、よろしければご覧くださいね。

category: 森・山

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