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風立ちぬ

日々の想いを風に乗せて…

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冬の足音 

東照宮を後にしていろは坂を上り始めた。
東照宮では、まだまだ紅葉も楽しめたし、結構バスツアーの団体客や
芸能人(古田敦さんと安野めぐさん)ともすれ違ったりしたけれど、
中禅寺湖方面はすっかり紅葉も終わったらしく、シーズンオフの平日となれば行き交う車もなかった。

カーブを曲って高度を上げる毎に、木々は葉を落とし冬木立となっていった。
明智平の展望台に着く頃には、飄々とした冬の森となり遠く越後の山々も見渡せた。
あんなに晴れ渡っていたのに、どんよりとした雲が上空を多い、強い風が吹きつけた。
そして、風花が舞いだし、一瞬わたしたちを包んだのだった。

『わぁ~!雪よ。日光は秋だったのに、いろは坂を上った途端、冬景色だね。』
アイリスはストールを巻き直して、強風と対峙した。
「あんなにいいお天気だったのに、急に雲が出てきたわね。今年初めての雪だわ…」
わたしは、淡い風花を受けながら、いつか、奥秩父の山で風花に包まれた日を思い出していた。
あの時も、ちょうどこんな感じだった。
空は晴れているのに山の上にかかった雪雲の切れ間から零れ落ちてきた
雪片が風に舞い、一瞬、辺りを雪景色にした。

『それにしても、車、少ないね。中禅寺湖に向かう人はいないのかしら?』
ガラガラの駐車場を眺めながらアイリスが呟いた。
「そうね。中禅寺湖も、ひっそりとしてるわね、きっと…」
車の中からフロントガラスを見上げると、雪の粒があっという間に解けて水滴になった。
青空とグレーの雲の空のまにまに、銀色の雫が光っているようで綺麗だなと思い写真を撮った。
アイリスは、『ほんと、綺麗ね~♪』と呟いてしばし眺めていた。

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ふとした、本当に小さなことに、お互いの心が触れ合って響きあう。
わたしは、この瞬間を忘れないと思うし、娘もまた心のどこかに焼き付けてくれたような気がする。
いつか、アイリスが、この母娘旅を思い出した時、
この銀色の雫を思い出してくれたらいいなと思った。

いろは坂を快適に下って、わたしたちは青く輝く中禅寺湖畔に着いた。
湖は強風に波立って、まるで海のようにも見えた。
この強風の中、ほとんど誰も乗船していない遊覧船が船着場に着いた。
今日の運行は、この便で取りやめるとアナウンスされていた。

湖畔に引き上げられたボートも、もう出番を終えたように横たわっていた。
あまりの強風に、わたしたちは一番近くにあったメイプルと言うレストランに逃げ込んだ。
室内には赤々と暖炉が燃えていて、温かくてホッとした。
オーナーが『寒いでしょう!奥の暖炉の側の席へどうぞ!』と案内してくださった。
「暖かな部屋に入ったら、急におなかが空いたね(笑)」
わたしたちは、“手練ねハンバーグランチとケーキセット”を注文した。
新鮮なサラダと、とっても美味しい俵状のハンバーグだったけれど、
二人ともよほど、お腹が空いていたのかな?写真を撮るのも忘れて食べてしまった。
だから、ハンバーグランチの写真なしです(笑)

さて、その後、かねてから行ってみたかったイタリア大使館に行くことになった。
湖畔を中心街とは反対方向にしばらく走って駐車場に止め、
雑木林の中の道を湖畔沿いに遊歩道が伸びている。
初夏から錦秋の季節なら、とても美しい遊歩道だと思うが、この時季はちょっと寂しい。

でも、冬木立の間から青々とした湖面が見渡せ、大きく聳える
男体山を眺めているとこの季節も良いなと思ってしまう。
枝から枝へと、エナガの群れやヤマガラがやって来てその姿を見つけるのも楽しかった。

やがて、湖畔に瀟洒な建物が現われる。外壁に杉の皮をあしらった
珍しい造りで、とてもシックな佇まいだった。
最初に資料を展示してある無人の管理棟を見学した後、
別棟の大使館へと足を運ぶ。こちらは管理人の方が二人いらっしゃった。

わたしたちが扉を開けて中に入ると、年輩の男性が迎えてくれた。
『いらっしゃいませ、写真撮影は自由になさって結構です。
100円ほど、寄付金をお願致します。ごゆっくりどうぞ。』
と、とても親切で感じの良い方だった。
撮影は自由と聞いて、わたしは俄然、張り切ってしまった(笑)

ちょうど、先客の家族連れがいらした。
若いお父さんがソファーに座り、小さな女の子がはしゃいでいた。
本当は、ソファーに座ってはいけないのだろうけれど、
管理人の人は何もとがめたりしていなかった。
別荘の居間でくつろぐ親子と言った感じでとても良い雰囲気が流れていた。

館内には喫茶コーナーもあり、女性の方が入れてくれる
コーヒーの香りが、鼻をくすぐった。
外はとても寒々とした冬の森と湖が広がっていたが、
大使館の中は灯りが燈り、暖房が行きとどき暖かだった。
でも、そのれは、暖房だけの暖かさではないと思った。
無機質な展示館ではなくて、人が住む温もりを感じたからだった。

二階もどうぞと案内され、わたしたちは階段をあがった。
そこは、大使の寝室や、客室などがあり、窓辺からは
中禅寺湖や、湖畔のウッドデッキなどが見渡せた。
窓ガラスはどこも良く磨きこまれ、少し歪んだガラスから
見渡す景色が、とても味わい深かったりするのだった。
アイリスは、窓辺に佇んでしばし、遠くを眺めていたが、
『素敵なところね。何だか異国にいるみたい。』そう言って
ふり向いた顔は、満足そうに微笑んでいて、わたしも嬉しかった。

わたしたちは、大使館を出て、湖畔を歩いてみた。
湖面を渡る強い風が、白い波頭を立てて荒い波を打ち寄せる。
打ち寄せた波が白いリボンのように波打ち際に流れては消えて行く。
浜辺のように細かな砂に、足もとが微かに沈み踏み跡が残った。
それは、夏のものとは違う、冬の足あとのような気がした。

桟橋には、舟の姿はなくて、急に雪雲が空を覆い
ひとしきり、粉雪を降らせたのだった。
大使館を粉雪が包み、森は雪が舞う冬の森となった。
わたしたちは、白い息を吐きながら、急いで車へと戻った。
すると、また、青空が戻り、湖面が眩しく輝いた。
『不思議な体験をしたような気がするね。』
「うん、知らない国の冬の森を体験出来て良かったね。」

わたしたちは、そのまま車を走らせて戦場ヶ原へと向かった。
ほんの少しだけ遊歩道を歩き、晩秋の湿原を眺めた。
きつね色の草紅葉は、すでに枯れ色で吹きつける風になびいていた。
冬木立となった白樺やカラマツの枝に風が鳴っていた。
重く流れた雪雲と青空との間から時々差し込む陽射しが
柔らかく湿原や、周りの山肌を冬色に染めていた。
白樺の白い幹に迎えられ、野茨の紅い実に見送られながら歩いた。

わたしたちは、晩秋の奥日光に別れを告げ、再び、車に戻り、湯ノ湖へと向かった。
午後2時を回ったばかりなのに、走っているのはもう、わたしたちの車だけだった。
ますます、雪雲は広がり、湯ノ湖に着くと周りの山肌は雪景色となっていた。
『わぁ、すっかり冬だね。金精峠は大丈夫かしら?』
「まだ、時間的には早いから、凍ったりしていないと思うけれどね。」
『気を引き締めて運転するね。』「うん、よろしくお願いします。」
なんて、言ったけれど、金精峠は吹雪だった(*_*)

路肩にいくらか雪が残っているが、道路は問題なさそうだったけれど
吹きつける粉雪が、まるで生き物のように、路面を白く流れてくる。
「うわぁ~!!吹雪になってる。アイリスごめんね。
危険な思いさっせちゃって、運転頑張ってね。」と言うと
アイリスは、真剣にハンドルを握りながら呟いた。
『おかあさんとの旅は、いつもサバイバル。八ヶ岳では死にそうになったし
花巻では自転車で何10キロも走ったし、もう慣れてるよ。(笑)』

こうして、無事、金精峠越えを果たし、ひっそりと静まり返った
尾瀬界隈を走り抜けわたしたちの旅は終わった。
晩秋から初冬へと走り抜けたような旅だった。

旅の様子をデジブックにまとめましたので、よろしければどうぞ。


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早朝の日光へ 

昨夜は、美味しい夕食を個室でゆっくりといただいた。
昨年はわたしの誕生日旅行を兼ねていたので、今年はアイリスのお誕生日を祝った。
食事の後はのんびりと温泉三昧、今朝もまだ暗いうちに朝風呂に入ってきた。
川音を聞きながら、白々と天にある明けの星々を眺めながらの露天風呂、
これぞ、旅の醍醐味だなぁ…なんて風流を楽しんだ。
やがて、向かいの山の頂上部分だけが紅く染まり、段々と下に下りてくる。

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部屋の窓から眺めながら、パチリ、パチリと写す。
山の中腹に佇むホテルまで日が届き白壁が輝いた。
昨夜は分からなかったが、鬼怒川沿いの紅葉は、まだまだ見頃といった感じで山肌の木々が暖色に染まるのが美しかった。
外気はピンと冷たく澄み、川音に混じって野鳥たちの囀りが聞こえてきた。
朝食はバイキングではなく、和食の献立でゆっくりいただく、ごはんが本当に美味しくて
二人とも、いつもよりたくさん食べてしまった。^_^;

少し早いが、宿を出発し8時開門の東照宮に向けて車を走らせる。
森を抜け、突然目の前に男体山が見渡せる田畑の中の一本道を走り抜ける。
朝靄が薄っすらと立ちこめ、長閑で牧歌的な風景が広がっていた。
「なんだか、去年の遠野へ向かう道に似ているね。」
『うん、森を走り抜ける辺りは、軽井沢にも似ているね。』
「そうだね。浅間山が大きく見える道ね。今聳えているのは男体山よ。」

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わたしが、車窓の景色をパシャ、パシャ撮るので、アイリスが路肩に車を止めてくれた。
緩やかにカーブを描いて続く畑道、なんでもない田舎の風景なのだけれど、
朝の光の中で路傍の草が、しっとりと朝露を含んで輝いていた。
点在する民家や柿の実なんかも好きな風景だ。
わたしは、深く呼吸をしながらシャッターを押した。
こうしたら、朝の空気観まで写りこみそうだったから…(笑)

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アイリスのお陰で、8時チョッと過ぎには、東照宮の駐車場に車を止めていた。
まずは江戸時代の日本庭園という逍遥園を散策、池泉回遊式庭園だそうだ。
遠くの山を借景にした庭園は狭い空間だが情緒があった。
でも、紅葉が終わってしまっていたのは少し残念だった。

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まずは、1200年の歴史を持つと言う日光山輪王寺へ向かった。
千手観音、阿弥陀如来、馬頭観音の黄金の三仏が安置されているが
現在は大改築中で、お堂ごと、すっぽりと近代的な建屋の中に入っていた。
何だか物凄く違和感…^_^;

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わたしたちが、階段を上ってお堂に近づくと、とても大きな声でお経を読む声が聞こえてきた。
最初、マイクで放送しているのだろうと思ったが、お堂の中に入ってびっくりした。
30人以上はいるかと思われるお坊さんたちが全員でお経を読んでいるのだった。
その声が、ぴったりと合っていて、天井が高い大きなお堂の空間に響き渡っていたのだった。
何だかお経とは思えないような、綺麗なハーモニーで流れる歌声のようにも聞こえた。

『何だか凄いね。厳かな気持ちになるね。』
「うん、朝のお勤めなんだね。さすが、輪王寺だよね。こんなにお坊さんがいるんだもの」
わたしたちは、そんな事を話しながら回廊を巡って拝殿の中に入って言葉を失った。
『わぁ、綺麗…』、「すごい迫力…」かなり大きな仏像が、高い台座の上に安置され薄暗がりから見下ろしていた。
奈良の大仏や長谷観音もそうだけれど、屋内の大きな仏像と言うのは、
お堂の中の静けさや暗さや、上から注がれているような眼差しと相まって、畏敬の念を抱かせる。
まして、数十人のお坊さんのお経の大合唱をバックコーラスに聞きながらの拝観だからなおのことだった。
しかも、この空間にわたしとアイリス二人だけしかいないのだった。
わたしたちは、厳かな気持ちで手を合わせ、功徳をたくさんいただいたような気持ちになりながら外に出た。

やはり、仏像って、建物やその空間の中に置かれているからこそ、その真の美しさや力を発揮するのだと思った。
『朝早く、一番で拝観出来てよかったね。何だか得した気分。』とアイリスが呟いた。

その後、二荒神社など全ての建物を巡った。東照宮は過去に2回来ているが
今回は駆け足で隅々まで結構たくさんのものを拝観できたと思う。
樹齢数千年と言われる、杉木立の中に点在する煌びやかな建物は、当時の人々には
極楽浄土に見えたことだろう。

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すっかり長居をしてしまい、予定時間の11時を回ってしまった。
本当は東照宮周辺で食事をしようとお店もリサーチしていたのだが、このまま中禅寺
湖へと移動することにした。(初冬の中禅寺湖畔へ続きます。)

よろしければ、早朝の日光  東照宮 をデジブックでご覧ください。


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晩秋の渡良瀬を歩く 

11月23日、娘との旅の初日は、渡良瀬渓谷沿いに車を走らせ
シャロムの森を歩き、シャロムの樹に逢おうと計画にした。
アイリスは、快適に高速を走り抜け伊勢崎のICを降りた。
伊勢崎は畑が広がり、空がとっても大きく見える街。
大きな屋敷林の影に、ひっそりと佇む昔ながらの農家や、
街道沿いの古い街並みなんかを眺めていると懐かしく思えてくるのだった。

やがて行く手に、わたらせ渓谷鉄道の大間々駅が見えてきた。
この駅に車を止めて、わたらせ渓谷鉄道のプチ旅を楽しむこともできるらしい。
それもいいなぁ…と、ちょっと心が動いたが、シャロムの森の管理人さんに
電話をかけると、寄り道をしないでまっすぐに来て下さいとのこと。
心を残しつつ、通過した。
「でも、ちょっとだけ、寄り道しようよ。」というチョイ悪提案で、
アイリスは、『じゃぁ、ちょっとだけね。』と、“神戸駅”に立ち寄ってくれた。

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小さな草花の鉢植えが並べられた懐かしい駅。真っ赤なサルビアの花も
低いホームも、古い駅舎も、ほのぼのと晩秋の日だまりの中で温もっていた。

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緩やかにカーブしながら続く鉄路と枕木の色合いがすっごくいいなぁと思う。
信号機の形が好きだなぁ…心の中で呟く、カンカンカンと鳴らないかな…
わずかに残った紅葉が風にざわめいていた。

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二両だけの客車が幻のように現れて、ゆっくりとホームに向かってくる。

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あずき色の車体が、周りの景色に和んで見える。

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わずかな煙を吐きながら、列車がホームを離れ、旅の続きが始まる。
いつか絶対にこの列車に乗って旅をして見たいと思う。
『おかあさん、次回は乗ろうよ。また連れて来てあげるよ。』
と、アイリスが慰めるように笑顔を向けてくれた。

次の立ち寄り場所は、草木湖。
ここには、富広美術館もあるのだけれど、数枚写真を撮っただけでパスした。

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抜けるように青い空を映して、湖は青くさざ波が光っていた。
散り残った楓が陽に輝いて、その影をくっきりと地面に写していた。

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ここからは、沢入りの駅を目指し、黒坂の森バンガロー方面へと林道を進む。
もう、森はひっそりと誰もいなくて、楓だけが秋の名残りを精一杯に語っていた。

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瀬音を聞きながら…

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『寂しすぎる~^_^;このまま、どこまで行くの?誰もいないよ。』
アイリスが、不安そうに呟いた頃、やっとシャロムの森に着いた。
管理棟に出向き、インターホンを押す。すると、中から管理人さんの声がした、
『今朝、お電話された方ですね。1階の方に回ってください。』

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わたしたちは、1階の管理室で、地図を渡され管理人さんの説明を受けた。
『今、太陽の出ている真下ぐらいにシャロムの樹があります。
大体、この沢沿いに道がつづいていますが、途中、ちょっと崩れやすい箇所があるので気をつけてください。
まぁ、大体、30分~40分ぐらいで着くと思いますよ。』
わたしたちは、お礼を言って地図を片手に出発した。
『お母さんと娘さんですか?きっと、良い思い出になりますよ!』
そう言って管理人さんは笑顔で見送ってくれた。

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『おかあさん、誰もいないね…この地図、よく分からないね。』と、アイリス。
「大丈夫、沢沿いに行けばいいのよ。」と、お気楽なわたし。
ところが、こちらだと、確信して歩いていった沢沿いの道は途中で行き止まり、
「あれ?おかしいなぁ?こっちじゃなかったのかな?」
『さっきの広いほうの道じゃない?』と言うことで、もう一方の道を登り始めた。
道は明瞭なんだけれど、どんどん高度を上げて行く。しかも沢から離れて行く。

やっぱりおかしい。と言うことで引き返し、最初の道をもう一度探してみた。
もう一本の道を見つけたが、こちらは木の枝で塞いであって通れないようだ。
『やっぱり、最初の道でいいのかも?』「うん、それしかないみたいだね。」
と言うことで、もう一度登りなおすことに(汗)
すると、森の中から、わんこが現われた。

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シャロムの森のワンちゃんのルイちゃんだった。
ルイちゃんは、アイリスの側に寄って行ってしっぽを振った。
「大丈夫よ。人懐っこいわんこだから。」と言うと
アイリスは、ちょっと、不安そうな^_^;をしたが、
恐々、ルイの頭を撫ぜてやった。

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楓だけが明るい晩秋の森を、ルイちゃんは、道案内でもするように、
振り返り、振り返りしながら、先立ちになって山道を登っていく。
「もしかしたら、ルイちゃんが、シャロムの樹に連れて行ってくれるかも」
と、わたしたちは淡い期待を胸に上って行った。

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だけど、道は、どんどんと高度をあげ、沢からずっと離れてしまったように思えた。
ちょうど、この辺りで後から上ってきた男女二人の方が追いついてこられた。
『この道でいいんでしょうか?』と、女性の方が尋ねられた。
「はい、わたしたちも、違うような気がしてるんですけれど…」
男性は地図を見ながら、たぶん大丈夫と思うんですが…と、言った。

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旅は道連れということで、ご一緒することに。
だいぶ高度が上がったところで、今度は一気に下り始める。
よし、コレで、沢に行き当たれば間違いないだろうと思ったが小さな沢に出会ったあと
またまた行き止まりになってしまった。

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『おかしいなぁ?ボク、ちょっと偵察してきます。』若い男性はザックを下すと
急斜面の沢を登り始めた。ルイは、さっさと先立ちになって登っていく。
やがて、男性は降りてきて『やはり、違うみたいです。』と言った。
そのあと、このお二人は、行き止まりの尾根を登って行って見ると言った。

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すでに、2時を過ぎてしまったので、わたしたちはここで引き返すことにした。
「ありがとうございました。シャロムの樹に逢えるといいですね!」
『ありがとうございます。それじゃ、行ってきます!』
笑顔で、そんな挨拶を交わし、ひと時、一緒に歩いた若者たちとお別れし
わたしたちは、また、二人になった。ルイはどこかに行ってしまったようだ。
きっと、あの二人に着いて行ったのかもしれない。

『おかあさん、あの人たち、シャロムの樹に逢えるといいね。』と、
二人の人が見えなくなるまで見送って、アイリスがポツンと言った。
「そうだね。健闘を祈ろうね。アイリスごめんね。せっかく来てくれたのに
結局辿り着けなくて、不完全燃焼だよね。」
『いいよ。そういう事もあるよ。こんな景色見れただけでも良かったよ。』

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葉を落とした木々の間から、谷を俯瞰してアイリスが呟いた。
午後の陽射しが、山を回ってちょうど谷の紅葉を照らしたところだった。
わたしたちが降りる道筋には、もう、所々にしか残っていないハウチワカエデが
燃えているようにチラチラと風にそよいでいた。

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落ち葉が降り積もった道を、滑りながらわたしたちは降りていく。
すると、どこからともなく凄い勢いでルイが降りてきた。
『あれ?あの人たちと一緒に行ったんじゃなかったの?』とアイリスが
嬉しそうに笑顔を向けた。

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ルイは、あちこち寄り道をしながら、着いて来た。
時々、じっと、谷を覗き込んだり、樹の上を眺めたり、
そのうち、樹にも登ろうとしていた。
「きっと、リスでもいるのかな?それともどんぐり好きな、ねずみかな?」
『え~!リスがいい(笑)』
なんてね(^_^)どこかで聞いた会話だね。

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それにしても、ルイちゃんは、野生児だね。
樹に登っているよ(笑)

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もう、一年近く日原の巨樹探しもしていなかったので、
スッカリ巨樹センサーが働かなくなってしまったみたい。
今日は、シャロムの樹に逢う事は叶わなかった。
『でも、いつでも逢えるとは限らないんだよ。』
またまた、となりのトトロのさつきとめいのお父さんのフレーズが蘇る。
そうだよね。また来ます。

帰り道、川沿いのオオカエデが午後の陽射しに輝いて見送ってくれた。

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そして、プチ鉄のわたしのためにアイリスは沢入の駅に立ち寄ってくれた。
でも次の列車は、3時50分、まだ40分以上あるから待つことはできない。
わたしたちは、急いで無人駅のホームへと入った。
ひっそりとしたホームの中程に懐かしい待合所がある。

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彼方へと延びる線路…山々に囲まれた駅は早くも夕暮れ時を迎えていた。
哀愁が漂う山の駅に、二両だけの列車が入ってくる。
ぼんやりと点るライトが、薄暗がりに浮かび上がる…車窓にも温かそうな灯りが燈る
いいだろうなぁ、そんなシチュエーション。撮ってみたいなと思う。

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楓とドウダンツツジが、赤と朱と紅を競っていた。

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何だか、ホームの向こう側に、おびただしい楓があるようだ。
線路を越えて行ってみると、川まで遊歩道が続いている。

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枝垂れかかるような楓林が続き、緋色のトンネルのように見える。
「ちょっとだけ行ってみようか?」わたしたちは頷きあって遊歩道へと進んだ。

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川は碧く澄んでいる。楓の赤が映えて綺麗だった。
朝ならまた格別の美しさだろう。

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今を盛りの楓…ため息が出るくらい美しかった。
「アイリス、ありがとう。立ち寄ってくれて、もう十分に満足よ」
『ほんと、綺麗だったね!降りて良かったね。車で通り過ぎてしまったら判らなかったものね。』
「さぁ、出発しようか!」
『うん、今度はまっすぐにホテルまで!!』
アイリスは、真剣な眼差しで、初めての道を一路日光へ向かい車を走らせた。
そして鬼怒川温泉に着いたのはちょうど5時だった。アイリス、お疲れさま(*^_^*)


≪追記≫
帰りに管理人さんはお留守だったので、後日お礼のメールを入れた。
辿り着くことが出来なかったという報告に、管理人さんは驚いて返信をくださった。
「メールを読んで驚きました。でも、もう少しの所だったのですよ。
お二人が辿り着いたあの沢から、数100メートルほどの所に大カツラがあるのです。
後続の男女の方は、その後、シャロムの樹に辿り着いて戻ってこられました。
次回、いらっしゃる時にはメールをください。シャロムの森が新緑に染まる頃
そう、大カツラにハート型のかわいい葉がそよぐ頃、いらっしゃいませんか?
何とか時間を作りご案内いたします。もちろん冬の静かな森も素敵です。
いつでもお待ちしておりますよ。」
なんて温かなメールだったことだろう。
辿り着けなかったからこそ、森と渓を愛し、シャロムの森に住む人の温かさに触れることが出来た気がした。

そして、あのお二人がシャロムの樹に辿り着けて本当に良かったと思った。
さっそく、アイリスに報告すると、『あの人たち辿り着けたんだね♪良かったね。』
と、嬉しそうな言葉と笑顔が返ってきた。
もし、もう一度、アイリスとあの森に行く機会があったなら、こんどこそ
二人一緒にあのシャロムの樹に出逢えそうな気がする。
そして、その時は、きっと、すごく感動することだろう。


長くなってしまいました。読んでくださった方、ありがとうございます。
(早朝の日光へに続きます。)

category: 森・山

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母娘旅の始まり 

昨年に引き続き、今年もアイリスとの母娘旅をすることになった。
今年は、何かと忙しく9月の旅行は無理だったので、アイリスのお誕生月の11月に行く事になった。

紅葉は微妙な時期なので、場所を決めるのに迷った。
アイリスは、最初、わたしを尾瀬に連れて行ってあげたいとのことで、老神温泉泊を提案してくれた。
「もう、尾瀬はシーズンオフだから、山小屋も開いていないし、橋げたも外されているわよ。
寂しい荒涼とした風景だと思うわ。お母さんは、そういうのも好きだけれど、アイリスにはどうかしら?つまらないかもしれないわよ。」と言うと、それでも良いと言ってくれた。

わたしの想いは急に膨らんだ。眠りに着く尾瀬に逢いに行ける。
たとえ、山の鼻の研究見本園までだっていい…
久しぶりに、燧ケ岳と至仏山の姿だけでも見ることが出来たら…
上の大堀あたりの、池塘群を眺め、枯れ色の尾瀬ヶ原を流れて行く
川上川の澄んだ流れが見たいなと思った。

ところが、調べてみると11月7日で、鳩待峠へのゲートは封鎖されている事が判った。
唯一、車でアクセスできるのは富士見下だけだった。
アヤメ平まで富士見下から登って見るのも良いと思った。
散り敷いたふかふかの落ち葉の持ちだろう。
もしかしたr白いアヤメ平かもしれない。
無理そうなら、行けるところまで登って降りてくればいい。

けれど、わたしは、富士見下までの道を知らない。
シーズンオフに、はたして安全に行ける道なのだろうか?
そして、かれこれ5年も尾瀬から遠ざかっているわたしに、娘を連れて行く資格があるのだろうか?
そう考えた時、もっと、安全に行ける場所にするべきだと思った。
「尾瀬は、この時季は無理そうだから日光にしない?
渡良瀬の方から入って、中禅寺湖や小田代ヶ原を散策するのはどう?」

この計画に娘も頷いた。
『おかあさんが、それでいいならいいよ。尾瀬はまた来年行こうよ』
尾瀬に連れて行ってあげたいと思ってくれる娘の心がありがたかった。
来年こそ、もう一度尾瀬を歩けるかもしれない。そう思うと希望が湧いた。
大好きな尾瀬に、もう一度再会できるかも知れない。

それから、いろいろ情報誌で調べたり、ネット検索したりして、
結局、鬼怒川温泉に宿を取った。
行きに渡良瀬渓谷沿いに走って、シャロムの森に寄ってシャロムの樹に逢い
一路、鬼怒川温泉郷へ、
宿泊する宿は川岸で眺めの良い露天風呂があるそうだ。
温泉三昧で、美味しい物を食べる!これも今回の旅の目的なのだ。

続きます(^O^)/


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皆既月食に思う 

昨夜は、11年ぶりに観測できる皆既月食ということで
9時半頃から、2時頃まで、何度も庭に出ては月を見上げていました。

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だんだんと、欠け始めた月は、11時頃には、三日月のようになり、
やがて薄い月の輪郭だけの線になり、スッカリ隠れてしまいました。
でも、月は消えてなくなったのではなくて、空の凄く高いところに、
星たちに囲まれて確かに存在していました。

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まるで、夜がその瞼をそっと閉じたように、…
そして、また、少しずつ、薄っすらと目を開けていくように、
真っ暗な空の彼方に一筋の光が差し、だんだんとその光の筋が
大きくなっていき、もとの満月へと戻っていったのです。
そんな神秘的な夜空を見上げながら、人の命も同じなんじゃないかなと
思いました。


9日早朝、フィギアスケートの浅田真央ちゃんのお母様が永眠されたとのニュースを見ました。
真央ちゃんは、出場を諦め、急ぎ帰国の途につくも、間に合わなかったと聞きました。
なんて可哀想なのだろうと胸が痛んで仕方ありませんでした。
せめて、臨終の時に側にいさせてあげたかったです。
まだ、21歳の彼女には、あまりにも酷なことですね。
心の傷が癒えて、また、元気な真央ちゃんになられるよう祈りたいです。

そして、10日の夕方、昨年まで会社にいらしたFさんが、
亡くなられたという訃報に接しました。
まだ、50代のFさん、何があったのかは分かりませんが驚いてしまいました。
人の命って、脆いのですね。人生って虚しいものですね。
あまりお話したことはないけれど、つい、2ヶ月前、偶然バスの車窓からFさんを見かけたのでした。
コンビニで買い物をして、自転車で帰って行く後ろ姿。
少しだけ、寂しそうに見えました。

Fさんは、奄美大島のご出身でした。一度だけ写真を見せてくれて
とっても、良い所だと懐かしそうに話してくれました。
帰りたいとも言っていました。
あれから、奄美大島に、帰る事が出来たのでしょうか?
もしかしたら、故郷に帰らないまま、逝ってしまったのでしょうか?
そんな事を考えていたらとても悲しくなり、消えて行く月にご冥福を祈りました。

月は夜空から消えてもそこにあるのです。
命も、一度消えたように見えるけれど、きっと存在しているのです。
わたしたちが、忘れてしまわない限り、きっと夜空のどこかに
静かに煌めきながら存在し続けているのだと思いました。
11年ぶりに見る事が出来た皆既月食の日に感じた事を
きっとわたしは、忘れないと思います。

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category: 日々の思い

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二人遠足(百尋の滝) 

今日は、お友達のはるかちゃんが、千葉から訪ねてくれました。
前日は、抜けるような青空の一日でしたが、女心と秋の空…
一転、今日はお昼過ぎから雨の予報が出ています。
ここは、晴れ女のわたしとはるかちゃんの晴れパワーで晴れを呼ぼう!!
なんて、メールで話していたら、京都のちかちゃんからも、
『はるかさんと、二人遠足、よろしおすなぁ~晴れパワー送りますえ~!』
という、電車の中で、思わず笑顔になるような楽しいメールが届きました。
すると、どうでしょう!青梅駅ではるかちゃんと落ち合う頃には、
うっすらと水色の空が覗き、雲の切れ間からは、柔らかな陽射しも射してきました。
『わぁ!ちかさんのお陰ですね。』と、髪を短く切ってボーイッシュになった
はるかちゃんが悪戯っぽく笑います。

わたしたちは、車窓の風景を眺めながら、積もる話を、たわいもなく話しては
笑いながら奥多摩駅にと着きました。
まだ、ほんの半月前、尾瀬仲間さんたちと集まった記憶も新しいままに、
今日は、待ちに待ったはるかちゃんとの二人遠足です。

平日は9時台の日原行きのバスがないため、駅前のタクシーを利用します。
一台に7人ぐらいは乗れそうで、次回の奥多摩遠足の時にも利用できそう!
などと考えながら、川乗山の登山口の川乗橋のバス停に着きました。

このバス停から30分ほど林道を登り上げ、細倉橋から山道へ入ります。
10月の終わりに、ここに来た時には、まだ、青々とした夏のような森に、
ヒトツバカエデの黄葉だけが、真っ先に色づいて輝いていました。
12月に入るとさすがに、山々は、ほとんど葉を落とし、所々に
燃え残ったようなイロハカエデやハウチワカエデの朱が目をひき、
透き通るような黄葉が美しいチドリノキや、サーモンピンクの葉が
燃えているように美しいメグスリノキが、ぽつん、ぽつんと彩を添えているだけでした。

ヒトツバカエデもチドリノキもメグスリノキも、葉の形からは、
楓の仲間とは思えないのですが、こうして、秋の彩の最初と最後を
締めくくるなんて、やはり楓の仲間なのだと妙に納得したりします。

百尋の滝までのこの道のりは、いくつもの小さな滝や、せせらぎや、
深い谷をめぐる早瀬や、山肌から染み出した湧き水の流れなどを
見ながら登って行きますが、葉を落とした森は眺めも良くなり、
葉の繁る季節には見え隠れしていたものたちが姿を現し、
今まで気づかなかったものたちが見えてきます。

流れの岸辺に佇む巨木たちも、その樹の本来の姿で語りかけてくるようでした。
苔むした幹も、風雪に耐えた荒々しい樹皮も、落ちて失った樹幹も
その木々が生きてきた証を見せてくれているような気がしました。

森の中を縫うように流れる渓流の姿もまた美しく、
足元を埋める落ち葉たちの感触も心地良くて、他の季節にはない
初冬の森の楽しさに、こころが満たされて行くのでした。

冬鳥たちとの出会いも、こころときめきます。
どこかでジョウビタキの声がします。朝の道でエナガの群れに出会い、
谷筋ではカワガラスの姿も見かけました。

はるかちゃんも、嬉しそうに梢を見上げエナガの姿を探し、
巨木を見上げます。
渓谷を何度も渡り返す高架になった橋も『ちょっと怖いですね。』
と言いながら笑顔で渡ってきます。

「ほらこれ、ハナネコの葉っぱなのよ。春にはきっとたくさん咲くわ」
と、指差せば、『ほんと、可愛い♪』と目を輝かせます。

苔の幾何学模様を美しいと思い、その苔から、北八ヶ岳の森の話に
なります。『わたし北八ヶ岳にも行きたいなぁと思っているんです。』
と、はるかちゃん。
「うん、いいよね。白駒池やその周りの針葉樹林帯の苔の森。」

『しーちゃん、娘さんと行きましたよね。嵐の中の北八ヶ岳』
「そうそう、あの時は、怖かったのよ。森に入ったら真っ暗で…」
『娘さん、よく、がんばりましたよね。』と、はるかちゃん。
「そう、娘は、お母さんとの旅はいつもサバイバル。
八ヶ岳では死にそうになった。と、言うのよ。
わたしも、ちょっと、反省してるのよ。」と、わたし。

「いつか二人で北八に行かない?高見石小屋、良かったよ!」
と言えば、『はい!!行きたいです♪』と、即座に答えてくれる。
本当に、妹みたいな存在です。

やがて、ちょっと急な登りをこなせば、目指す百尋の滝です。
こんな雨模様の休日に登ってくる人もいないかと思っていたら、
元気な若者たちのパーティがやってきました。
樹間に白い滝の姿が見え隠れし、はるかちゃんが足を止め見入っています。
急な階段を降りると、いよいよ滝は正面に見渡せます。

若者たちは歓声をあげていました。いつみても優美で繊細な滝です。
今日は、ことのほか、しなやかで、絹糸のような流れでした。
晴れていたら、滝の中間に虹が架かること、
冬には、滝の外側から徐々に凍っていくこと。
氷瀑も見事だけれど、滝壺の凍結も美しいこと、
さらには流れの薄氷や、氷のドームに光が射すととても綺麗なこと。
そんなことを話しながら、わたしたちは滝を眺めながらお弁当を食べました。

「さぁ、そろそろ行きましょうか?」
わたしたちは、百尋の滝に見送られながら来た道を戻っていきました。
ありがたいことに曇天ながら、まだ雨は落ちてきません。
時折り、薄日さえ顔を覗かせてくれました。
わずかな午後の陽射しが、川面に反射して白く光っているのを、
谷筋についた道から俯瞰しながら降りているときでした。

水面に丸い輪が出来ては消えています。何かいるのかな?と
思っていると、黒い影が何度も潜ったり浮いたりしています。
はるかちゃんもそれに気づいて
『なにか、おぼれてるの?動物かしら?』と聞きました。

双眼鏡を取り出してみて見ると、カワガラスでした。
「カワガラスよ。水に潜って川の中の虫や小魚を食べているのよ」
そう言って、双眼鏡を手渡しました。
『あ、本当だ。かわいい!あっ!また、潜ったわ。』と
はるかちゃんも嬉しそうに声をあげます。
わたしたちは、登山道にしゃがんで、枯れ枝越しにしばらくの間、
カワガラスの潜水風景を眺めていました。

何度も潜った後、カワガラスは川の中の岩に佇み羽繕いを始めました。
陽射しが反射した川面は白い帯のようになって流れていきます。
白い光の中のカワガラスの姿が、彼方にいるわたしたちの目に
シルエットになって見えました。

ほんの数分間の出来事でしたが、初冬の森の中で息づく
キラキラとした命の姿が見えるようでした。
何故か、遥かな山の呼び声のような、木霊が耳に届いたような
そんな錯覚に落ちました。
そして、かぜくささんと言うお友達が書いた“カワガラス”という詩を
思い出しました。
自然の事象に造詣が深く、その多くのものたちを慈しむ彼女の詩は、
暖かく心に染みてきて多くを語りかけ、教えてくれます。
大好きなかぜくささんの詩をリンクせさせていただきます。

かぜくささんの『カワガラス』の詩

カワガラスの羽は分厚くて水を弾くように出来ていて、
その羽の下に空気をたくさん蓄えていて水に潜ることが出来るのだそうです。
そして、川床を歩けるように、その足には吸盤を潜ませているのだそうです。
これは、かぜくささんの詩が教えてくれたことです。

わたしは、晩秋の森で、ひそやかに生きるカワガラスに、
出逢えたことが嬉しかったです。
そして、ひとりではなく、友達とふたりで見れたことが、
さらにこころを温めてくれました。
はるかちゃん、一緒に歩いてくれてありがとう。ほのぼのとこころ通う、
そんな森歩きでしたよ。

晩秋の森へ  デジブックにしました。よろしければご覧ください。



カワガラスの動画を見つけましたので、添付します。

category: 森・山

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むかしからの風に吹かれて 

昨夜、わたしたちは、しっとりと落ち着いた慎ましやかな和の宿で
友と三人で枕を並べ、ぐっすりと眠りに就く事が出来ました。
川の音が絶え間なく響き、まるで雨が降っているように感じます。
でも、それは耳障りというのではなく、かえって心落ち着く音でした。
しっぽりと宿そのものを包んでいるようなせせらぎの音、
森林セラピーというのがあるけれど、きっと、これはせせらぎセラピーだわ
わたしは、目を閉じてそんな事を考えているうちにいつの間にか眠りに落ちていました。

翌朝、まだ、日も昇らないころ、わたしたちは支度をして外に出ました。
暗い空には、白い月が輝いていて、昨夜は満月に近かい月齢の月だった事を知るのでした。
ゴトンゴトンと味わいある御嶽駅の駅舎に、始発の電車が着きました。
長年、青梅に住みながら、こんな早朝に御嶽駅界隈を歩いた事がなかったと
しみじみと思いながら、今日、ここにあることを嬉しいと思うのでした。

渓谷沿いの土産物店や飲食店の佇まいが、ちょっと温泉街のようにも見え、
旅情が感じられ、ますます、わたしは見知らぬ街に来た旅人のようになりました。
清々しい朝の空気が満ち満ちて、いつの間にか白み始めた空に、
まるで水に浮かんだ薄氷(うすらい)のように、透明な月が漂っていました。
まだ、光の届かない渓谷の大銀杏は、黙って枝先を広げ、せせらぎの音を聞いています。

友と語り合い、そぞろ歩く朝の渓谷、白波が洗う大岩も、
朝靄が立ち込めた岸辺も、巡りゆく時を紡いでいるようでした。
友が、銀杏の側に立つ石碑に『夢』の文字が刻まれている事に気づきます。
一人では気付けなかったその事に、心は喜びに満たされます。
昨夜の銀杏の佇まいは、まさに夢のようでした。
深まりゆく秋の、夢ひと夜…
そんな事を考えながら見上げれば、大銀杏に朝陽が届きました。

御嶽小橋を渡り、対岸の楓林を眺めます。
まだ色付き始めたばかりの楓ですが、そのしなやかな枝先のほのかな彩りが
大銀杏の黄色をバックにシルエットのように引きたちました。
わたしは、その美しさに魅せられて何枚も写真を撮ってしまいました。
宿に戻る途中の、壁に絡まるツタの彩りや、
古びた茅葺の屋根に生えた草の姿に魅せられました。

わたしたちは、お世話になった宿を後にして、奥多摩駅へ向かいます。
そして、バスで奥多摩湖へ…
抜けるような青空に、キラキラと光りを浮かべた静かな奥多摩湖の
湖面を眺めながら、この湖底に沈んだ村のあった事を思いました。
わたしたちの今年の秋の遠足は、この奥多摩湖から、奥多摩駅まで
いにしえの人々が山を開き、谷に沿うように作った、
かつての街道、“奥多摩むかし道”を歩きます。
むかしからの風に吹かれて…

よろしかったら、遠足の一日をデジブックでご覧ください。



<奥多摩むかし道のこと>

奥多摩町は、昭和30年に、多摩川に沿った鳩ノ巣村、氷川町、小河内村の三ヶ町村
の合併により生まれました。
東京都の水がめとして、昭和32年に奥多摩湖が出来た時、最上流に位置していた小河
内村は、先祖代代暮らしてきたその思い出の地と、人々が往来していた青梅街道ご
と、奥多摩湖の湖底に沈んでしまったのだそうだそうです。

ダム建設工事のための資材運搬用の広い道路の作られ、氷川駅(現在の奥多摩駅)
から先にも鉄道が敷かれ、当時はSLが荷物を運んでいたそうです。
ダム完成と共に、鉄道は廃線となりましたが、道路のほうは整備され、
さらに奥多摩湖まで延長され、現在の国道ができました。

新しい道路開通により、深い谷に寄り添うようにして、集落と集落を結び、
甲府街道へと続いていた道は、街道としての役目を終え、一部の住民の生活道となりました。
奥多摩町誕生から40年が経過した平成7年に、町はかつて人々が行き来していた
青梅街道筋を「奥多摩むかし道」という名で遊歩道として整備しました。

category: 森・山

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